愛し君へ2
『玉置は本が好きなのか?』
俺は話を反らすために質問した。
『はい。本って、内容ももちろん面白いですけどその人なりの哲学っていうか、考えがわかって楽しいんです』
『本ってそんなに奥深いのか?俺は面白ければいいけどな』
『大野君は本っていうかマンガでしょ?』
『うぐっ‥‥痛いとこ突きやがって(汗)』
すると玉置は本棚のほうへ歩いて行き、一冊の本を取りだし持ってきた。
『これとか、ページ数少ないし内容も簡単なんでどうですか?』
俺は本を受け取り、ペラペラめくってみた。
『うーん、目眩がしてきた(笑)』
『そんなこと言わないで読んでみてください、きっと面白いですよ?』
『じゃあ借りてくわ!』
俺は気が進まなかったが玉置の笑顔に負けて読むことにした。
『ふふ‥』
『ん?どうしたいきなり笑って?』
『私、大野君と一度こうやって話してみたいと思ってたんです』
『えっ!?』
俺はビックリして目を開いた。
『だって大野君、ドラマの主人公みたいなんだもん』『俺が?どうして?』
『うーん、どうしてだろう?なんかいつも会話の中心にいるっていうか‥あ、ほら、1年生のときのあの事件、本当に凄かったです』『1年の事件?‥‥あぁ、あれか』
その事件ってのは、うちの学校恒例の新入生いびりだ。
入学式が終わり、クラス分けして教室に入ると、三年と二年の不良が何人か中にいて、新入生が驚いてる間に、
『挨拶なしかガキども!!ヤんぞテメーら!!』
と、怒鳴り付けて一番意気がってそうな奴の胸ぐらに掴みかかるというもの。
男子は『す、すみませんでした!おはようございます!!』と、頭を下げてビビってるし、女子は脅えて泣き出す奴すらいた。
でもうちのクラスは違った。親父がヤクザの奴がいて、頭も下げず、
『うるせぇよ、目下相手に凄んでんじゃねぇ!』
と、机を蹴飛ばして胸ぐらを掴み返した。
『てめぇ‥‥ぶっ殺す!!』
下に舐められるのは我慢ならない先輩は、そいつに殴り掛かった。
ガスッ!
『きゃーーー!!』
殴り飛ばされたときに机にぶつかって、その机がぶっ飛んで入り口にいた女子達の近くに倒れた。
『痛っ!このヤロー!!』バキッ!
そいつも負けじと殴り返した。
でもそれがいけなかった。後で分かったことだったが、その先輩こそ、キレると誰も止められないくらい暴れだし、ナイフまで取り出すので有名な、俺が2年になったときに倒した来年頭になる先輩だった。
その先輩はサバイバルナイフを持ち出し、1年生のそいつを刺そうとした。
『卑怯だぞ!』
そいつはさすがに怖くなり、入り口の奴らを掻き分けて逃げて行った。
『逃げんじゃねぇ!』
先輩はナイフをブンブン振り回しながら暴れだし、そいつを追いかけて片側の扉からでて廊下へ行き、もう片側からまた入ってきた。
そうなると、当然入り口に固まってた奴らは教室に逃げ込むことになり、強盗に教われたような感じになってしまった。
『助けてお母さん‥‥』
『うぅ…』
『何で俺たちまで‥‥』
みんな、あまりの出来事に弱っていた。
『てめぇ、俺にんなことしてどうなるかわかってんのか!?』
『知るかボケッ!殺してやるから動くなや!!』
2人が睨み合っているとき、1人の女子が割って入ってきた。
『や、やめてください‥殺人になりますよ?』
その女子こそ玉置明日香だった。震えながら2人を止めようとしただけでもすごい女だった。
『女がしゃしゃりでてんじゃねぇ!』
2人そろってどなりつけた。
『ひっ!』
さすがの玉置も、怖くてビビって動けなくなった。
『邪魔なんだよ!どっか行け!』
ドンっ!
『きゃあ!』
玉置はヤクザの息子に突き飛ばされ、机にぶつかった。
『あれ?何が起こってんの?』
そのとき、入学式をサボっていた俺と潤が、状況を呑み込めていなくて、潤が思わず質問した。
そしてすぐに俺達は頭を押さえてうずくまっている玉置を見つけ、
『潤、何があったかは知らないが‥‥』
『あぁ、どいつが原因かは明白だな』
俺はゆっくり玉置に近付き、
『大丈夫か?』
『うん‥なんとか‥』
『誰か、玉置を保健室に連れてってくれ。ついでに先生も呼んでこい』
『それなら私が』
1人の女子が、玉置に『大丈夫?』と聞きながら肩をかして保健室に向かった。『‥どっちだ?』
俺は静かに聞いた。
『あぁ!?邪魔するな大野!!』
ヤクザの息子がこっちに向かってきた。
『はいストップ』
潤が腕を広げて止めた。
『今質問してるのはこっちだろ?それに、こいつを怒らせたらどうなるか‥‥わかるだろ?』
潤は静かに言った。
『うっ‥』
そいつはビビって目を反らした。
『で、どっちだ?2人共か?』
はっきり言って俺はどっちでもよかった。
早くこの怒りをぶつける相手が欲しかったからだ。
『お、俺だよ』
ヤクザの息子は下を向きながら言った。
『お前か‥』
俺はそいつに近付き、止まり、
『何発殴った?』
『一度突き飛ばしただけだ!』
『そうか、じゃあ一発だ。俺が一発殴るのを耐えろ、それでチャラだ』
『ふ、ふざけ‥‥』
ドカッ!!ガシャン!ゴロゴロ‥‥
俺の渾身の一撃でそいつは吹っ飛び机にぶつかったあと勢いが止まらず転がって気絶した。
そして俺は先輩のほうを向き、
『すみませんでした、先輩。こいつに代わって僕が謝ります。』
俺は深々と頭を下げた。もちろん、もしこいつが玉置を殴ってたら今そこに転がってたのは先輩だろうけど。
『お前、なかなか見所あるな。俺の舎弟にしてやるよ』
『すみません、舎弟は勘弁してください。生意気な後輩とでも思ってください(笑)』
『ひひひ、やっぱ面白いわ、お前。じゃあこの辺にしといてやるよ。お前と、そこの奴、名前は?』
『大野拓也です』
『早川潤っす!よろしくっす!』
『拓也に潤か、覚えとくぜ!じゃあな!』
『お疲れっした!』
そして、皆が安心したあと、俺や潤に、
『本当にありがとう!大野君めちゃくちゃ強いんだね!』
『早川君カッコよかった!』
とか、いろいろ感謝されてる間に玉置が帰ってきた。『あ、玉置』
『大野君、早川君、ありがとね』
『明日香ちゃん大丈夫だった?』
潤が質問した。
『うん、軽い打撲だったから湿布貼ってもらってきたの』
『そっか、よかった。』
『あ、聞いたよ大野?私のために怒ってくれたんだってね?その‥あ、ありがとう!』
『あ、いや、その‥うん‥』
俺は赤くなってる玉置を見てすごく恥ずかしくなった。
『思ってみれば、最悪の入学式だったな(汗)』
『そう?私は痛かったけどちょっとドキドキしたよ(笑)』
『お前、意外と変なんだな』
『おかしいかな?‥‥うん、おかしいね(笑)』
『なんだそれ(笑)』
『でも見たかったなぁ、大野君がカッコ良くやっつけるところ』
『見苦しいだけだよ、男と男の喧嘩なんて』
『そうかな?』
『そうだよ』
『あ、それであの事件のどこが主人公なの?』
『喧嘩し始めた2人の男、止めようとして怪我をした美少女。そして颯爽と登場してやっつけた正義の味方!これって結構王堂なんだよ?(笑)』
『自分で美少女言うなよ(笑)』
『そこは聞き逃してよぉ!』
『あはは(笑)』
『あ、そろそろ暗くなってきたね』
『本当だ、帰るか?』
『うん』
『送って行くよ』
『本当に!?ありがとう!』
こうして俺達は、一緒に帰り、途中で携帯を教え合った。
続きはまたいずれ書きます。エロ無しですみません。
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