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( ^ω^)とξ゚?゚)ξが愛のあるセクロスをするようです。3


ξ゚?゚)ξ「ブーンと千台ね・・・」

ブーンとの電話を切ってバスに乗り込んだツンは、先ほどの会話を思い出していた。
まさかブーンと千台へ行くことになるとは予想外だった。しかもブーンから誘われるなんて。

ξ゚?゚)ξ(まぁ、一番いいカタチになったのかも)

本当はチケットを売りつけるのは心苦しかったが、他に良い方法が思いつかなかった為、
相談も兼ねてブーンに電話をしたのだ。
予想外の事態にはなったものの、お互いが納得できる形に落ち着けて、ツンはとても安心していた。

ξ゚?゚)ξ(・・・二日休み取るってことは、一泊するってことだよね?)

ブーンとは今まで二人きりで数え切れないほど遊んだ。
しかし、さすがに一泊してどこかへ出かけたことは一度もなかったのだ。
いくら恋愛感情がないとはいえ、男女が一泊の旅行をするのには、やはり抵抗があった。
勿論ホテルの部屋は別にするつもりではあるが、恋人同士でもないのに一泊旅行をするのは常軌を逸しているのではないか?

ξ-?-)ξ「う~~~~~~~ん・・・・・・・」

コンサートは18時に開演で、終了予定時刻は21時だ。
確かにブーンの言う通り、コンサートが終わった後に帰るのはバタバタしそうだし、
せっかく千台に行くのならのんびりとしたい。
それなら思い切って一泊した方が、千台を満喫できるだろう。

ξ゚?゚)ξ(まぁいっか。いつもみたく遊ぶ延長だと思えば)

ブーンとは気心の知れた仲だし、気を遣わなくて済むから心から楽しむ事が出来そうだ。
そう考えると、なんだか旅行がすごく楽しみになってきた。
ツンは携帯を取り出し、5月×日のスケジュールに”千台チェミストリー withブーン”と登録した。

翌日、ブーンはいつものように家で暇を持て余していた。
夕方になって洗濯物を取り込もうとしているところへ、ツンから電話がかかってきた。

ピピルピルピピ~♪

ピッ
( ^ω^)「もしもしだおー」

ξ゚?゚)ξ「あー、ブーン。今電話大丈夫?」

( ^ω^)「大丈夫だお。休みの件はどうなったお?」

ξ゚?゚)ξ「休み取れたよー。×日と、その次の日。
      私、学校あるから土日で休み取ったけど、あんた大丈夫なの?」

( ^ω^)「大丈夫だお。多分休みもらえるお」

ξ゚?゚)ξ「そっか、じゃあ土日で千台ね。
      ところで交通手段なんだけどさ、一泊するなら、新幹線よりも高速バスがいいな。
      そっちの方が安いし」

( ^ω^)「わかったお。じゃあ、バスとホテルの予約は俺がするお」

ξ゚?゚)ξ「え?いいの?」

( ^ω^)「ツンがチケット用意してくれたからいいんだお」

ξ゚?゚)ξ「そっか、じゃあよろしくね」

ブーンは平静を装っていたが、内心とても興奮していた。
といっても性的な興奮ではなく、遠足前日の小学生と同じような、楽しみで仕方がないといった類の興奮だった。

この後、具体的な出発時間と、ホテルの場所などを話し合い、電話を切った。
これでツンとの旅行が決定した。

ゴールデンウィークに突入したある日、ブーンはいつものようにギコの下で働いていた。
自販機の補充の際の車での移動時間は長い。近隣の町村へ、車で一時間くらいかけて補充に行く時もある。
もはや移動中はドライブ気分で、よく二人が好きな音楽をかけて移動していた。そして昼食はいつもギコがご馳走してくれた。
ギコはその営業所で所長の次に偉いらしく、仕事もできることから給料も結構もらっているらしい。
独身で特に物欲もない為、お金が余って仕方ないのだと、笑って話していた。

この日も同様に、補充に訪れた隣の町の道の駅でラーメンをご馳走になっていた。

( ^ω^)「ギコさん、今度休みが欲しいお」

(゚Д゚)「お?いつ?」

( ^ω^)「5月×日と△日だお・・・」

(゚Д゚)「いーよ」

(;^ω^)「え!?土日だけどいいのかお?」

(゚Д゚)「別にGWの繁忙期過ぎれば俺一人でもなんとかなるし。
    たまには休め。届けは出しておく」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

(゚Д゚)「ところで何すんの?」

( ^ω^)「チェミストリーのコンサートに行くんだお」

(*゚Д゚)「マジ!?いいなあああああああ!!!!!」

ギコはチェミストリーがとても好きで、二人が親睦を深めたのも、チェミストリーの話題がきっかけだった。
仕事中もチェミストリーの話題が出るし、車での移動中のBGMもほとんどがチェミストリーだった。

(*゚Д゚)「×日ってことは千台?」

( ^ω^)「そうだお」

(*゚Д゚)「うわあああああ俺も行きたかったあああああ!!!!!
    感想とか聞かせてくれ!!!!!」

(*^ω^)「わかったお」

まさかこんなにも簡単に休みを取れるとは思わなかった。
しかも、自分がチェミストリーのコンサートに行くのを喜んでくれているみたいで、すごく嬉しい。

(*゚Д゚)「チケットどうしたの?お前ファンクラブに入ってたっけ?」

( ^ω^)「友達が知り合いから買ったらしいお。その友達と行くお」

(*゚Д゚)「そっかあ!!良かったなあ!!!!
    しかも一泊か!!!楽しんでこいよ!!!!!」

(*^ω^)「お土産楽しみにしてて下さいお」

ギコが、そうかー千台ねー、と言いながらタバコに火をつけた。
そして、興奮した様子で”やっぱり生歌も上手いのかなぁ”とか、”チェルチーの歌歌うかなぁ”などど話し始めた。
ブーンもその話を嬉しそうに聞く。チェミストリーの話をする時のギコは、まるで子供のように無邪気だ。
きっと相当好きなのだろう。

昼食を取り終え営業所に戻る車の中で、ギコがチェミストリーの歌を口ずさみながらブーンに話し掛けた。

(゚Д゚)「そういやお前彼女とかいねーの?」

( ^ω^)「いないお」

(゚Д゚)「そっかー。好きな女とかは?」

( ^ω^)「好きなコもいないお」

(゚Д゚)「ふーん」

( ^ω^)「・・・・・でも、ずっと近くにいるコはいるお」

ブーンの脳裏に、ツンの笑顔が浮んだ。
ツンのことはもちろん好きだ。でもそれは恋愛対象としての感情ではない。
もっと、ずっと大切にしていきたい、そんな存在だった。

ドクオへ対してのそれとは、また違った感情ではあるが・・・。

(゚Д゚)「好きなんじゃねーの?」

( ^ω^)「好きとは違うけど・・・・大切な友達だお」

(゚Д゚)「ふーん」

ギコはタバコをくわえ、再びチェミストリーの歌を口ずさんだ。
ブーンはとても恥ずかしくなった。こんな話、ドクオともしたことがない。
ブーンは恥ずかしさを隠しつつ、昼食で立ち寄った道の駅で買ったヨーグルトの蓋を開けた。

その後少し会話をしたところで、ジュースと雑誌を買い、ホーソンを後にした。
旅行まであと十数日。旅行のことを考えると、自然と足取りが軽くなる。
綺麗な星空を眺めながら、ブーンはツンとの旅行に思いを馳せていた。

( ^ω^)(ツンは方向音痴っぽいから、ちゃんと下調べするお。
      ホテルはやっぱり駅に近い方がいいかお。ご飯は・・・)

旅行のことを考えると思考が止まらない。こんなにわくわくした事が今まであっただろうか。
その日ブーンは、遅くまで旅行雑誌を見ていた。

翌日、ブーンは高速バスのチケットを買いホテルの予約をし、旅行への体勢は万全となった。
あとは当日が来るのを待つのみだ。

(;^ω^)「そういえばツンと会うのもすごく久し振りだお!!!!」

ただならぬ緊張がブーンを襲ったが、旅行への興奮でそれはすぐに掻き消された。

そして旅行前日―。
ブーンはバッグに着替えを詰め込み、旅行の準備をしていた。
そしてコンサート会場の場所の確認をする為に旅行雑誌を開いているところへ、ツンから電話がきた。

ピピルピルピピ~♪

ピッ
( ^ω^)「はいおー」

ξ゚?゚)ξ「あ、ブーン?準備進んでる?」

( ^ω^)「万全だお。早めに寝て明日に備えるお」

ξ゚?゚)ξ「もー、私今バイト終わって帰ってきたから、今から準備しないといけないよー」

( ^ω^)「寝坊したらおいてくおwwwwwww」

他愛もない会話がはずんでいく。
ツンも旅行が楽しみなのだろうか、声がいつもより明るい気がした。
15分ほど話した後、明日の待ち合わせ場所と待ち合わせ時間を確認し、
明日の朝はお互い起きたらメールを入れ、もしメールがない場合は電話をして起こす約束をし、電話を切った。

そしてブーンは明日着る服を用意し、目覚まし時計をセットしてベッドに入った。

( ^ω^)「楽しみだおwwwwwwwwwwwwwwww」

部屋の電気を消し、睡眠体勢に入る。
ツンは今日は何時まで起きているつもりなのだろうか。ツンは明日はちゃんと起きれるのだろうか。
ツンはどんな格好で来るのか。
そんなことを考えながら、眠りについた。

翌朝、ブーンは目覚まし時計の音で目が覚めた。
ベッドを飛び起き、すぐさまツンにメールをした。
そして眠い目をこすり、洗面所へ向かい顔を洗った。

朝食を取り終え、歯磨きをしているところへ、ツンから、メールが届いた。

『from:ツン
 件名:
 本文:おはよー。ちゃんと起きてますよ。
    ではではのちほど。         』

( ^ω^)「うはwwwwwww楽しみだおwwwwwwwww」

ブーンはその後全ての準備を済ませ、かつてないほどの高揚感を抱いたまま家を出た。

( ^ω^)「うはwwwww早く来すぎたおwwwww」

場所は高速バス乗り場の待合室。8時10分に出るバスに乗るため、待ち合わせ時間は余裕を持って7時50分。
しかしブーンは7時過ぎにバス乗り場に着いてしまった為、待合室のベンチに座ってコーヒーを飲んでいた。
本当は7時40分くらいに着く予定だったが、興奮の為かそわそわして落ち着かず、予定よりもかなり早く家を出てしまった。

何もすることがない。コーヒーを口にしながら時計を見ると、まだ7時10分を少し過ぎたところだった。
ツンに、待合室に着いたとメールを打とうか?いや、それではツンを急かしてしまうかもしれない。
やはりツンが来るまで黙って待っていよう。

待合室の壁際にある什器には、日本各地への旅行プランのチラシがたくさん並べてある。
ブーンは、東京方面のプランのチラシを何種類か取り、ベンチに座って眺めていた。

10分ほど経ったところで、ドアが開く音がし、ブーンの足元に風が入り込んできた。
ブーンはチラシへ向けていた目をドアの方へ向けた。

ξ゚?゚)ξ「・・・・あれっ。ブーン、もう来てたの?」

(;^ω^)「!!!!!ツン・・・!!」

待ち合わせより30分も早く、ツンは待ち合わせ場所へ現れた。
ツンはドアをそっとしめ、ブーンのもとへ駆け寄る。

ブーンはツンを見て息をのんだ。
五分袖の真っ白のブラウスに、大きな花柄がプリントされている淡いピンク色のロングスカート。そしてヒールのサンダル。
髪はいつものツインテールではなく、左耳の下あたりにひとつにまとめて結わえてある。
急に女らしくなったというか、とても大人びて見える。そんなツンがやけにまぶしく見えた。

ξ;゚?゚)ξ「いやー、びっくり。まさか私より早く来てるとは」

ツンはスカートをふわりとなびかせ、ブーンの隣に腰掛けた。
ブーンは思わず身をのけぞらせた。

(;^ω^)「しばらく見ないうちに大きくなって・・・・」

ξ゚?゚)ξ「身長は伸びてませんけど。もしかして皮肉?」

(;^ω^)「ツンがロングスカート履いてるの初めて見たお」

ξ゚?゚)ξ「あー、こないだ買ったんだけど、なかなか着る機会がなくてね」

そう言ってツンは携帯の画面を見た。

ξ;゚?゚)ξ「バス出るまで50分くらいあるね・・・・」

早く来すぎた、と言ってツンはバッグからミネラルウォーターを取り出した。
キャップを開けて口へ含んだあと、そのボトルをベンチに置いた。

ξ゚?゚)ξ「なんかさ、余裕持って来なきゃって思ってたら、こんなに早くなっちゃった」

( ^ω^)「俺もだお。俺は7時過ぎに来たお」

ξ;゚?゚)ξ「えっ、それは随分早いね!」

こうやって直接会って話すことに、少し抵抗があった。
あまりに久し振りだから、うまく話せるか分からなかったからだ。
しかし実際ツンに会って、そんな不安はすぐに吹き飛んだ。

ξ゚?゚)ξ「ねぇ、ところでバスのチケットはちゃんと持ってきたの?」

( ^ω^)「持ってきたお、はい」

ブーンは財布の中から高速バスのチケットを取り出し、ツンに見せた。

ξ゚?゚)ξ「ありがとー。悪いね、取ってもらっちゃって」

そう言ってツンはチケットを手に取り、バッグに入れようとした。

( ^ω^)「チケット返してくれお。俺があずかるお」

ξ゚?゚)ξ「え?なんで?」

( ^ω^)「ツンが持ってるとなくしそうだおwwwwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「何それー!あんたって本当に失礼な男だよねー」

ツンは頬を膨らませた後、万が一のこともあるからね、と笑って、バスのチケットをブーンに渡した。

ξ゚?゚)ξ「で?ホテルはどこを予約したの?」

( ^ω^)「駅から歩いて5分くらいのビジネスホテルだお」

ξ゚?゚)ξ「ちゃんとシングルを2部屋で予約したわよね?」

(;^ω^)「勿論だお」

ξ゚?゚)ξ「それならいいのよ」

それから二人は、とどまることなくずっと話しつづけた。
2ヶ月も会っていない為、次から次へと話題が飛び出してくる。
ツンの学校での話や、TVのバラエティ番組の話、そしてチェミストリーの話・・・。
バスに乗るまでの50分の間、会話は休む事なく続けらた。
そしてバスに乗った後も、二人の会話は続いた。

バスに乗って数時間後。二人が乗るバスは千台へ着いた。
荷物を持ち、二人はバスを降りた。

ξ゚?゚)ξ「ここどこー?街のど真ん中だね」

( ^ω^)「あっちの方に行くと千台駅だお」

ξ゚?゚)ξ「へー・・・、一人だと迷子になっちゃう」

二人はとりあえずホテルへ荷物を預けることにした。
駅から歩いて4~5分の、少し小道に入ったところに、そのホテルはあった。
隣にコンビニがあり、繁華街からも近い。割と便利そうな所だと、ツンは思った。

入り口の自動ドアをくぐり、小さいが清潔感のあるフロントにいた女性スタッフに荷物を預け、そのままホテルを出た。

ξ゚?゚)ξ「で?まず何する?まだお昼前だよ」

( ^ω^)「うーん、お腹すいてるかお?」

ξ゚?゚)ξ「あんまり・・・。先に買い物行こうよ」

( ^ω^)「何欲しいお?」

ξ゚?゚)ξ「服見たい」

( ^ω^)「とりあえずアーケードのあたり歩くお」

二人は、特に目的も持たずに歩き、入りたい店があれば入り、買い物を楽しんだ。
疲れたらカフェで一休みし、また買い物。
その間も会話は止まる事がなかった。
ツンは見るもの全てが珍しいかのように目を輝かせてはしゃいだ。
ブーンはそんなツンを見ているのがとても楽しかった。

午後4時頃、小腹が空いた二人はカフェでサンドイッチを食べていた。

ξ゚?゚)ξ「そろそろ会場に向かったほうがいいかな?
       開くのは5時だけど、多分もう並んでるよね」

( ^ω^)「会場へは地下鉄を使って行くお」

ξ゚?゚)ξ「あっ、そういえば電車の時間とか大丈夫?間に合うかな?」

( ^ω^)「大体5分とか10分おきくらいに出てると思うお。余裕で間に合うお」

ξ;゚?゚)ξ「へー・・・すごい。電車が一時間に一本しかない田舎とは大違いね。超便利!」

ツンはベーグルサンドを頬張りながら、地元と千台の大きな違いに感心していた。
ツンを見ていると面白い。何に対しても興味があるようで、
例えば街を歩く人が多いというだけで感心するし、地元では見た事のないオシャレなお店を見つけるたびに入りたがる。
ブーンは、来て良かったと、心から感じていた。

30分ほど休んだ後、二人は地下鉄の駅へ向かった。
そして電車に乗り込み、会場へ向かった。

電車を降り、地図を頼りに会場へと向かう。
途中、ダフ屋に声を掛けられながら二人が会場に到着したのは、5時になる少し前だった。
開場時間間近ということで、会場前には長い行列ができていた。

ξ;゚?゚)ξ「なんじゃこりゃ。人多すぎ」

( ^ω^)「ツン、こっちの列の方が人が少ないお。こっちに並ぶお」

ξ゚?゚)ξ「うん。
あっ、あっちは?あっちの方が少ないよ!」

( ^ω^)「あっちはチケットを持ってなくて立ち見希望の人の列だお」

ξ゚?゚)ξ「へー」

ツンは、なるほどねー、とうなずきながら、開場待ちの列に並んだ。
今日ツンは一生分感心したのではないか、と考えたら、なんだかすごくおかしくなった。

ξ-?-)ξ「チェミが見れるのは嬉しいけど、2階席ってのがねぇ」

( ^ω^)「アリーナだったら、みんなが立ったらツンはステージを見れなくなるお。
      だから2階席でちょうどいいと思うお」

ξ゚?゚)ξ「それもそうね・・・」

(;^ω^)「ちょwwwwここつっこむところwwwwww」

ツンは普段は態度が冷たく言葉もキツいところがあるが、ふとしたところで天然になる。
本来のツンは天然で、それを隠す為に冷たい態度を取るのではないかと思うほどのギャップだったが、
そこがまた彼女の可愛いところでもあった。

ツンはチケットを片手に開場を心待ちにしている様子だった。
そんなツンを見ながら、大好きなチェミストリーの歌を生で聞けるという夢にまで見た出来事に、
ブーンも心を躍らせていた。

「開場時間になりました。順番に荷物チェックを受け、場内にお入りください」

5時をちょうど回ったところで、拡声器ごしの男性スタッフの声が辺りに響いた。
周囲のザワつきが一層大きくなる。ツンも急に瞳を輝かせて、ブーンの方へ振り返った。

ξ*゚?゚)ξ「ねえ!開場だって!」

( ^ω^)「聞こえてたお」

ξ゚?゚)ξ「荷物チェックって何?」

( ^ω^)「カメラとか危険物を持ってないかチェックするお」

ξ゚?゚)ξ「へぇー。ここにいる全員をチェックするの?」

( ^ω^)「そうだお」

ξ゚?゚)ξ「大変じゃん!」

15分ほど経ったところで、ブーンたちの順番が回ってきた。
スタッフにカバンの中を見せるように指示され、ツンは持っていたハンドバッグを開けて見せた。
ブーンはバッグの類を持っていなかったので、ツンの荷物チェックが終わった後にすぐ中に通された。

入り口のすぐ近くに、コンサートのグッズやパンフレットを販売するブースがある。
開場してからわずか15分ほどなのに、そこは黒山の人だかりになっていた。

ξ;゚?゚)ξ「うわー、私も見たかったけど、無理っぽいな」

( ^ω^)「ツンがあの中に入ったら押しつぶされるお」

ξ゚?゚)ξ「あんた背高いんだから、ちょっと見てきてよ!」

(;^ω^)「いやだおwwww人ごみは嫌いだおwwwwwさっさと席に行くおwwwwwwww」

納得のいかない表情を浮かべるツンを連れ、ブーンは2階へと上がった。
すでにたくさんの人が入場しており、少しずつ混雑し始めていた。

( ^ω^)「ツン、トイレ行くなら今のうちだお。後からだと混んで入れなくなるお」

ξ゚?゚)ξ「あっ、じゃあ行ってこようかな」

( ^ω^)「そこのドアの前で待ってるお」

ξ゚?゚)ξ「わかった!」

ツンはそう言って、トイレへと駆け込んでいった。
それにしてもすごい人だ・・・。さすがは人気のチェミストリー。チケットが即完売したという話も頷ける。
そう考えると、ツンがチェミストリーのチケットを手に入れたのは奇跡かもしれない。
二人で旅行にも来れたし、ツンにチケットを売った人には、感謝の一言に尽きる。

5分ほど経ち、ツンがトイレから戻ってきた。
二人は通路の壁に貼ってある座席の案内図を頼りに、チケットに表記されてある席を探した。

( ^ω^)「えーと・・・ここだお」

そこは2階席の1列目で、場所はステージのまん前だった。

ξ゚?゚)ξ「すごい!ステージの真正面じゃん!すっごく見やすいね!」

( ^ω^)「いい感じの場所で良かったお」

ξ゚?゚)ξ「このくらいの席の方が私には合ってるかも。
      ゆっくり落ち着いて歌聞きたいから」

( ^ω^)「俺もだお。近くで見れなくても、同じ空間にいて歌ってくれてるってだけで満足だお」

二人は席につき、ステージをボーっと眺めていた。まだ開演まで30分ほどある。
1階の方も、続々と観客が入場し、席が人で埋まっていく。
もうすぐチェミストリーの歌が聞ける。そう考えると身が引き締まるようだ。

ξ゚?゚)ξ「あっ、私何か飲み物買ってこようかな」

ツンがそう言い、バッグを開けて財布を探し出した。

( ^ω^)「じゃあ俺が買ってくるお。何がいいお?」

ξ゚?゚)ξ「あ、じゃあ紅茶がいいな。ストレートティー」

( ^ω^)「つめた~いのでいいかお?」

ξ゚?゚)ξ「うん。つめた~いのね」

ブーンは席を立ち、階段の近くにある自販機へ向かった。
小銭を入れ、ツンに頼まれた紅茶と、自分の分のお茶を買った。
2本のペットボトルを手に持ち、ツンとの会話を思い出した。つい口元が緩む。
なんだかとても幸せな気分だと、ブーンは思った。

( ^ω^)「お待たせだおー」

ブーンがツンに紅茶を差し出す。ツンはそれを受け取ると、ニコッと笑った。

ξ゚?゚)ξ「ありがと」

ブーンは急に耳が熱くなるのを感じた。心臓がドキドキしている。
ツンの、少しはにかんだような笑みがとてつもなく可愛く見えて仕方がない。
ブーンはペットボトルの蓋を開け、お茶を喉に流し込んだ。

ブーンは、この感情を持つのがいけないことのように感じていた。
ツンは大切な友達。友達に恋愛感情を抱いてはいけない。
それに、これはツンの意外な一面を見てしまったが故の一時的な感情にすぎない。
つり橋の法則と一緒。二人で旅行という初めての経験への緊張を恋だと勘違いするようなものだ。

ブーンがペットボトルを座席の下に置いたところで、場内にアナウンスが入った。

「本日は、チェミストリーコンサートツアーイン千台にご来場いただき、誠に有り難う御座います。
 まもなく開演になります。場内が暗くなりますので、お席をお立ちのお客様は、お早めに御着席下さいますよう、
 お願い申し上げます」

そのアナウンスを聞いたツンが、嬉しそうにブーンに話し掛ける。

ξ゚?゚)ξ「もうすぐ始まるね!」

ツンはバッグとペットボトルを座席の下へ置き、じっとステージを見つめる。

(*^ω^)(もうすぐチェミの歌が聞けるお・・・)

ブーンの期待が自然と高まる。心臓が静かに、そして強く鼓動する。

「お客様にお願い申し上げます。場内が暗くなりますので、お席についたままお待ちください」

そのアナウンスの後、場内の照明が落とされた。
ステージに淡いスポットがあたる。その先にはピアノが置いてあり、そこにはすでに人が座っていた。
場内が少しずつ静まり返る。ステージ横の時計を見ると、6時を少し過ぎたところだった。
もうすぐ始まる・・・。場内の観客は、息をのんでステージを見守った。

その時、ピアノの音とともにチェミストリーの二人がステージの奥から現れた。
場内に黄色い歓声が飛び交う。
チェミストリーの二人は黙ったまま、ステージにセットされてあるオブジェのようなものに座った。

ピアノの音が場内に響き渡る。歓声がおさまるのと同時に、ピアノの音がやんだ。
そして、アカペラで二人は歌い始めた。
観客たちは、静かにじっとして二人の歌声を聞いている。
ブーンたちも同様に、ステージ上のチェミストリーを見つめていた。

歌が2番に入った時、ピアノの演奏も一緒に始まった。
そして、淡いスポットがひとつ、ふたつと増え、それと同時にアコースティックギター、バイオリン、ドラムなどといった
楽器が次々と演奏に加わり、歌を壮大に盛り上げた。

ブーンはその様子を見て思わず震えた。舞台演出や楽器の演奏のテクニックもさることながら、
何よりもチェミストリーの歌声に酔いしれていた。
ブーンは我を忘れてステージを食い入るように見つめる。すぐ近くではないが、同じ会場内にいて同じ空気を吸って
自分の前でチェミストリーが歌っている。
その感動を何と例えたら良いか、ブーンには思い浮かばなかった。

コンサートは休むことなく続けられた。時間いっぱい、チェミストリーの美しい歌声が観客を魅了し続けた。
途中二人のトークが入ったりして、場内があたたかな雰囲気に包まれる。
観客はすっかりチェミストリーの虜になっていた。

最後の曲になり、チェミストリーが”最後はみんなで立って、手拍子で演奏に参加して下さい”と促すと、
観客たちは次々と立ち上がった。
ブーンたちも、周りが立ち上がるのにあわせて立ち上がった。
チェミストリーの歌声と観客の手拍子という夢の共演に、観客たちはとても興奮していた。
そして、チェミストリーのコンサートは、大盛り上がりの中、幕を閉じた―。

ξ*゚?゚)ξ「はぁ~、すごかったね、チェミストリー!」

二人はコンサート会場を後にし、駅のホームで電車を待っていた。
その間も会話はチェミストリーのことで盛り上がった。

ξ*゚?゚)ξ「本当に歌うまかったよね!」

(*^ω^)「最後の歌の手拍子もすごく楽しかったお!」

興奮はおさまる事を知らない。コンサートを思い出すたびに心も体も熱くなっていく。
まるで夢の中にいるかのようだった。

ξ゚?゚)ξ「きっと今夜は打ち上げやるんだろうねー」

( ^ω^)「牛タン食って帰るって言ってたお。明日牛タン屋に行ったら会えるかもしてないおwwwww」

ξ゚?゚)ξ「チェミと牛タン食べた~い!」

電車を降りた後、二人ははしゃぎながらホテルへ歩いた。
時計を見ると、もうすぐ10時になろうとしていた。

( ^ω^)「これからどうするお?どこかでご飯食べてくお?」

ξ゚?゚)ξ「うーん、今日はもう疲れたし、コンビニで何か買って入ろ」

( ^ω^)「わかったお」

二人はホテルの隣のコンビニに寄った。そこでおにぎりやスナック菓子類を買い、ホテルへ向かった。
そしてチェックインを済ませて預けていた荷物を受け取り、二人は部屋へ向かった。

( ^ω^)「303号室と305号室だけど、どっちがいいお?」

ξ゚?゚)ξ「どっちでもいいわよw」

そう言ってツンは内藤の手から鍵を奪い取った。305号室の鍵だった。
エレベーターで3階へ上がり、ブーンはツンを部屋の前まで見送った。

( ^ω^)「305はここだお。明日の朝は何時に出発にするお?」

ブーンがツンに尋ねる。しかしツンは上の空で、視線が宙に浮いていた。何か他の事を考えているようだった。

( ^ω^)「ツン?どうしたお?」

ξ゚?゚)ξ「あのね・・・・」

ツンが真剣な表情でブーンの顔を見つめる。
一体何事なのだろう。まさか、今になって”泊まるのはよくない、帰る”なんて言い出すのでは・・・。

ξ゚?゚)ξ「私・・・・部屋に一人はこわい」

(;^ω^)「は?」

急に何を言い出すかと思ったら・・・。ツンの表情は真剣だが、まるで子供のようだ。

(;^ω^)「高校生にもなって何言ってるんだお」

ξ///)ξ「だって・・・しょうがないじゃない!
      自分ち以外の場所で一人になるのが嫌なのよ!」

ツンが怒った表情のまま頬を赤く染める。部屋の鍵をぎゅっと握り締め、視線をそらした。

(;^ω^)「もしかして、幽霊とか信じてるお?」

ξ///)ξ「信じてるわけじゃないけど・・・!!
      だって、よく言うじゃない?ベッドの裏にお札がびっしり・・・とか!」

(;^ω^)「そんなの都市伝説だお。大体お札があったら幽霊は出ないお」

ξ゚?゚)ξ「とにかく!一人はこわいの!」

普段意地を張りまくってるくせに、幽霊や都市伝説を信じているなんてツンらしい。

ξ゚?゚)ξ「でも、多分眠くなったら怖いのとかどうでもよくなると思うから・・・」

ξ゚?゚)ξ「寝る前までブーンの部屋にいてもいい?」

(;^ω^)「えっ・・・・」

思いも寄らないツンの言葉に、つい返事に詰まる。
言葉が出てこない。なんて言ったらいいのだろう。

ξ゚?゚)ξ「じゃあ、荷物置いたらあんたの部屋に行くから!」

(;^ω^)「ちょwwwww・・・・・・・・・わかったお」

ξ゚?゚)ξ「じゃ、ピンポーンって鳴ったらすぐ出なさいよ!」

ツンはそう言うと、305号室へ消えていった。

ホテルでの夜を、ツンと一緒に自分の部屋で過ごす・・・。
予想を越えた事態に、ブーンの思考回路は完全に停止していた。

部屋の鍵を開けると同時に、部屋の照明がついた。
ブーンはコンビニの袋を小さなテーブルの上に置き、ジャケットをハンガーにかけた。
そしてベッドに腰掛け、ふーっとため息をついた。

(;^ω^)「もうすぐツンが部屋に来るお・・・」

そわそわして落ち着かない。無駄に携帯をチェックしてしまう。
ツンは寝るまで自分の部屋にいると言っていたが、はたして何時に寝るつもりなのだろうか。
今日はたくさん歩いたし、コンサートでもはしゃいだから疲れているはず。

(;^ω^)「なんかやけに喉が渇くお・・・」

ブーンはコンビニで買ったお茶をごくごくと飲んだ。

ピンポーン

(;^ω^)「!!」

部屋のインターホンが鳴った。
ツンがきた!ブーンはベッドから立ち上がり、急いでドアを開けた。

(;^ω^)「はいだおー」

ξ゚?゚)ξ「来たわよ。お邪魔しまーす」

ツンは、戸惑っているブーンを尻目につかつかと部屋に入った。

ξ゚?゚)ξ「ご飯食べよ」

(;^ω^)「うんお」

ブーンとツンはベッドに並んで座り、テーブルを引き寄せてその上にコニビニで買ったおにぎりや冷やし中華を並べた。
安いビジネスホテルのシングルルームはとても狭い。自然と二人の距離も近くなる。

ξ゚?゚)ξ「はい、お箸」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ゚?゚)ξ「じゃー食べよ。いただきまーす」

ツンが両手を合わせておじぎをする。ブーンもそれに合わせて手を合わせる。
ツンはいつも食事の時はこうする。食べ終わった後も、「ごちそうさまでした」といって同じように手を合わせ、おじぎをする。
以前ブーンは、どうしてそんなに行儀がいいのかと尋ねた事がある。
その時ツンは、両親にしつけられたから、と答えた。

( ^ω^)「冷やし中華うめぇwwwwwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「ちょっと、きったないわねー。あんたもっと落ち着いて食べなさいよ」

( ^ω^)「おにぎりうめえwwwwwwwwwwww」

ξ#゚?゚)ξ「あーっ!それ私のツナマヨ!!」

ツンとの食事がとても楽しい。ついつい大袈裟にはしゃいでしまう。

ξ゚?゚)ξ「それにしても、コンサートすごかったねー」

ツンは、冷やし中華の麺をかき混ぜながらコンサートのことを思い出していた。
とても明るく晴れ渡った空のような表情をしている。

( ^ω^)「チェミの歌聞けて良かったお」

二人は食事をしながら、チェミストリーの話に花を咲かせた。

食事も終わり、ツンはそのままブーンの部屋でテレビを見ている
ブーンは改めて、この状況の異様さを感じていた。

(;^ω^)(これは・・・・・・・・・据え膳!?)

(;^ω^)(・・・・いやいや、違うお。きっとツンは危機感を持ってないお。
      もしツンが危険だと思ってたら、そもそも俺の部屋には来ないお)

テレビを見て無邪気に笑うツンの隣で、ブーンは一人悶々としていた。

(;^ω^)(でも、夜のホテルの一室に若い男女が一緒にいるって、
      誰がどう見ても異常な状況だお)

果たしてツンの真意はどうなのだろう。
ツンはいつになったら自分の部屋に戻るのか・・・。

ξ゚?゚)ξ「あ、ごめんねブーン。もしかして眠い?」

ブーンが考え事をしているのが、眠たそうに見えたのだろうか。
ツンはブーンを気遣って話し掛けた。

(;^ω^)「いやっ、大丈夫だお!」

ξ゚?゚)ξ「私はまだ起きてたいけど、あんたが眠たくなったら部屋に戻るから言って」

(;^ω^)「わかったお・・・」

どうやらツンはまだこの部屋にいるらしい。
それにしても喉の渇きが激しい。部屋に暖房が効いてるわけでもなく、特に乾燥しているわけでもない。
なのに額には変な汗が滲み、水分を取っても喉がすぐ乾く。

ブーンが喉の渇きを潤そうとペットボトルに手を伸ばした。
ペットボトルを持ち上げると、手ごたえのない軽い感触がした。中身は底をついていた。

この状況で水分が取れないのは耐えられない。今すぐに水分が欲しい。

(;^ω^)「ツン、俺、コンビニにジュース買いに行くお」

ξ゚?゚)ξ「あ、わかった」

(;^ω^)「何か欲しいものでもあるかお?」

ξ゚?゚)ξ「さっき買ったから特にないよ」

(;^ω^)「じゃあ行って来るお
      鍵は置いていくから、インターホンが鳴ったら開けてくれお」

ブーンはジャケットをはおり、ドアノブに手を掛けた。

ξ゚?゚)ξ「気を付けて」

ドアを開けたところで、後ろからツンが声をかけてきた。
ブーンは適当に返事をして部屋を出た。

(;^ω^)「さっきから変な考えしか浮んでこないお・・・」

ツンと同じ部屋にいて、考え付く事はよこしまな事ばかり。
10代の血気盛んな男子には仕方のないことではあるが・・・。

ブーンはコンビニに入り、1リットルのお茶をかごに入れた。
もしかしたらこれでも足りないかもしれないが、その時はまた買いに来ればいい。

他に特に買うものもなく、ブーンはコンビニを出てホテルへ入った。
フロントの前を通ると、男性スタッフがおかえりなさいませ、とおじぎをした。
ブーンはエレベーターに乗り、3階のボタンを押した。

( ^ω^)「あっ、コンドーム買うの忘れたお」

本気でツンを襲うつもりはなかったが、もしかして必要になるかもしれないとブーンは思っていた。
あまりの異常な事態に、ブーンの思考回路は壊れ始めていた。

エレベーターが3階についた。
ブーンは部屋に向かい、インターホンを押した。

ピンポーン

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」

(;^ω^)「・・・・・・・・・?」

いつまで経ってもドアが開かない。もしかしてツンは飽きて自分の部屋に帰ってしまったのか?
それなら、ブーンは自分の部屋に入ることはできない。

ブーンはもう一度インターホンを押した。
すこし経ったところで、ようやくドアが開いた。

ξ゚?゚)ξ「・・・・・ごめん、遅くなって」

ドアの影からツンが顔を出した。ツンはブーンが部屋に入った後にドアを閉めると、再びベッドへ座った。

( ^ω^)(”コンドーム買うの忘れた”
       ・・・・なんて、言ったらきっと軽蔑されるお)

よっぽど冗談で言おうかと思ったが、ぐっとこらえて胸にしまった。
ベッドに座るツンが、目をこすりながら言った。

ξ゚?゚)ξ「出るの遅くてごめんね、うとうとして寝ちゃってた」

( ^ω^)「そうかお」

ブーンはベッドの枕側に腰掛け、コップにお茶をついで飲んだ。
うとうとしていたというツンは相変わらずテレビを見ている。一向に帰る気配を見せない。

( ^ω^)(いつまでここにいる気だお・・・)

コップのお茶を飲み干しテーブルに置くと、ブーンは靴を脱いでベッドに上がり、壁によりかかった。
考えるのは今そばにいるツンのことばかり。テレビの内容なんて頭に入って来ない。

( ^ω^)(もしかして、これがOKサインってやつかお?)

そう考えたらツンの全ての行動に頷ける。
部屋に一人が怖いと偽ってブーンの部屋に一緒にいる口実を作り、
眠くてうとうとしたにも関わらず部屋に居続けるのは、”抱いて欲しい”というツンのOKサインなのではないか。

(*^ω^)(ツンと・・・・ツンと・・・・・)

よからぬ妄想がブーンの脳内をかけめぐる。
自然に体中の血液が一点に集中していく。

( ^ω^)(あっ)

(;^ω^)(やばいお!ちんちんおっきしてきたお!!!!)

ブーンのそれは、ズボンの下で存在を主張していた。
お願いだから落ち着いてくれ、というブーンの願いとは裏腹に、それはどんどん大きくなっていく。
ツンに見られたらまずい。ブーンは枕を抱くふりをして、さりげなく股間を隠した。

(;^ω^)(生き地獄だお・・・・)

もう泣いてしまいたいくらいに耐えがたい状況だ。
ブーンの分身は衰えることなく、完全な状態を維持し続けている。

それでもブーンが理性を失わないのは、ツンを大切な友達だと思う以上に、
ツンの過去の出来事がブーンを抑制しているからだ。

( ^ω^)(ツンは人並み以上に男に対しての警戒心が強いお。
      そんなツンが俺の部屋に来たってことは、俺に心を許しているからで、
      男として見ていない証拠だお・・・)

そう考えたところで、ブーンのものが少しずつ勢力を失っていく。
ツンと一線を越えてはいけない。ツンに劣情を抱くのは、ツンを裏切ることと一緒だ。

ふとツンの方を見ると、眠たいのか目がうつろになっている。
今の自分のそばにツンをおいておく訳にはいかない。もし自分を見失ってツンを無理矢理抱いてしまったら、
ツンの心の傷をえぐってしまう事になるだろう。

ツンを、大切にしたい。

( ^ω^)「ツン、寝るなら部屋に戻るお」

ξ-?-)ξ「うん・・・わかった」

( ^ω^)「送っていくかお?」

ξ-?-)ξ「大丈夫・・・一人で・・・・」

ツンはそう言うとふらりとベッドを立ち上がった。
ブーンもベッドから降り部屋のドアを開けてやると、ツンはおぼつかない足取りで部屋を出た。

ξ゚?゚)ξ「じゃ、おやすみ」

( ^ω^)「おやすみだお」

ブーンはツンが部屋に戻るのを確認する前にドアを閉め、ベッドに倒れこんだ。

これで良かったのだ。例えツンがブーンに抱かれるのを望んでいたとしても、
今の自分にはツンの心の傷を一緒に背負うことなどできない。
荷が重い。ツンを受け入れる覚悟が、自分にはまだない。

ブーンは、ツンに恋愛感情を抱く前に性的興奮をしてしまったことをひどく後悔した。
所詮自分も男ということか。本能とはいえ勃起してしまったことに憤りを感じた。

( ^ω^)「俺は最低だお・・・」

部屋にはツンの香水の香りがまだ残っている。
ブーンにはその香りが媚薬のように感じた。

ブーンのものが再び急激に大きくなる。
びっくりして股間をおさえると、手に固い感触がした。こんな状況で、体はどうして正直なものか。

(;^ω^)「おおおおおおおおおお」

ブーンはわけがわからないまま性器をものごい勢いで刺激した。
そして絶頂に達し果てた時、どうしようもなく鬱々とした感情がブーンを襲った。
射精後の倦怠感が、それを一層強いものにさせた。

( ;ω;)「おっおっおっ・・・」

ただ何も考えず、大きくなった性器を無我夢中で刺激しただけ。
しかし何故だろう、ツンに対しての罪悪感が強いのは・・・。

ツンを友達として大切にしたいと思っているのに、自分はなんて情けないのだろうか。
これではツンを襲った奴と変わらない。所詮自分も男だということなのだろうか。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。考えれば考えるほど、今まで感じた事のない黒い感情がブーンに重くのしかかる。

それでも、ツンの笑顔を大切にしたい。何よりもツンの近くにいたい。
その思いが強くなるたび、ブーンは罪悪感に蝕まれていった。

ピピルピルピピ~♪

( -ω-)「ん・・・」

翌朝、ブーンは携帯の着信音で目が覚めた。
ねぼけまなこで携帯電話の画面を見ると、ツンからの着信だった。

ピッ
( -ω-)「はいお」

ξ゚?゚)ξ「あ、おはよー」

ツンの少し鼻にかかった声が受話器越しに聞こえた。
どうやらツンも寝起きらしい。

ξ゚?゚)ξ「ごめん、まだ寝てたでしょ?」

( ^ω^)「大丈夫だお。何だお?」

ξ゚?゚)ξ「うん、ホテルの朝食が8時半までだから、そろそろ行った方がいいと思って。
      あんたも行くでしょ?」

部屋の時計を見ると、7時を少し過ぎたところだった。
昨日の疲れが完全に取れておらず体が少しだるかったので、もう少し寝ていたいとも思ったが、
ツンがわざわざ早めに起きて声を掛けてくれたのだ。好意を無にする理由はない。

( ^ω^)「俺も行くお」

ξ゚?゚)ξ「よかったー。一人じゃ心細かったのよね。
     じゃあ7時半くらいにあんたの部屋に行くから準備しといてよ」

( ^ω^)「おk」

ツンとの電話を切り、ブーンは思いっきり背伸びした。
レースカーテンから差し込む朝日が眩しい。今日もいい天気になりそうだ。

一泊二日の旅行の最終日。今言うのも変だが、あっという間に時間が過ぎた。
ツンともっと旅行していたい。何日も。

7時半を少し過ぎたところで、ツンが迎えにきた。
ツンは、少しレースがついたベージュのチュニックワンピースとピンクブラウンのカーディガンに細身のグレーのジーンズをあわせたコーディネートで現れた。

二人はエレベーターに乗り、1階のフロントの奥にある小さなレストランへ向かった。
スタッフに朝食券を渡し、窓際の席を確保した。
朝食はバイキング形式で、数種類の焼きたてパンと、コーヒー、オレンジジュース、
そしてスクランブルエッグ、ウィンナー、サラダというオーソドックスなメニューだった。

ブーンがカップにコーヒーをついでいる隣で、ツンがオレンジジュースをつぎながら
よくそんな苦いもの飲めるわね、と悪態をついてきた。
ブーンが”大人の味はお子様にはわからないお”と言うと、ツンがむきになって反論してくるのが楽しかった。

そして適当にパンを選び、サラダなどを皿に盛り、席についた。

ξ゚?゚)ξ「では いただきます」

( ^ω^)「いただきますおー」

二人で手を合わせておじぎをする。
ツンといるうちに、自分もクセになってしまったようだ。

ξ゚?゚)ξ「私、半熟の卵大っっ好き!」

そう言ってツンはケチャップの乗ったスクランブルエッグを嬉しそうに頬張った。
ブーンは、ツンが美味しそうにご飯を食べる姿を見るのが好きだった。

( ^ω^)「ところで今日はどこに行くお?」

ξ゚?゚)ξ「うーん、どこって言ってもあんま千台知らないしねー。
     ご飯食べるとこしか調べてないからよくわかんないんだよなぁ」

( ^ω^)「ちょっと遠いけどペニーランドはどうかお?」

ξ゚?゚)ξ「それって遊園地だっけ?」

( ^ω^)「そうだお」

ツンはフォークをもったまま真顔で何か考え始めた。そして、

ξ゚?゚)ξ「歩き疲れてるから遊園地はいい」

( ^ω^)「そうかお」

ツンはウィンナーを口にしながら、再び何か考え始めた。
ブーンも、お皿にてんこ盛りになってるパンをほおばった。

( ^ω^)「パンうめえwwwwwwwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「今日も買い物する!」

ようやく考えがまとまったのか、ブーンがパンに舌鼓をうってる時に急に話し掛けた。

( ^ω^)「わかったお。じゃあ、ツンが気になってたワンピースを見にまたポーラスに行くかお?」

ξ*゚?゚)ξ「行く!!!!!」

ツンが目を輝かせて言った。
いつもはキツイ言葉ばかりのツンが、今回の旅行ではやけに素直になったように感じる。
言動もいつもよりやわらかいようだ。

今日も、適当に街を歩いてウィンドウショッピングをすることになった。
あえてしっかりした予定を決めずに、気ままに散策するのが二人の性にあっていた。

( ^ω^)「チェックアウトは10時だけど、何時にここ出るお?」

ξ゚?゚)ξ「じゃあ10分前くらいにあんたの部屋に行くことにする」

( ^ω^)「朝は一緒に過ごさないのかお?wwwwww」

ξ゚?゚)ξ「過ごさないわよ!私だってやることがあるのよ」

朝食を食べ終え、二人はそれぞれの部屋に戻った。

( ^ω^)「お腹いっぱいだお。パン食べ過ぎたお」

ベッドに横になり時計を見ると、まだ8時半になる前だった。
テレビをつけ、朝のニュース番組をBGMに、ブーンは帰り支度を始めた。

昨晩の出来事がブーンの脳裏をよぎる。
色々考えたが、ツンの傷を、友達として見守ってあげる事ならできる。
そう考えたら、心が少し軽くなった。
自分にもできることがあるのだ。

約束通り、10時にはる10分ほど前にツンはブーンの部屋を訪れた。
二人はホテルをチェックアウトし、駅に向かった。そしてコインロッカーに荷物を入れ、
昨日に引き続き千台の街を散策した。

ツンが気になっていたワンピースは、それが最後の一着だという店員の一言で、意を決して購入した。
少々高かったが、ツンは満足気にそのショップの袋を抱えていた。
そしてブーンも、同じビルに入っているメンズのセレクトショップで財布を購入した。
予てから買い替えたいと思っていたので、ちょうどいい機会だった。
そしてアーケードをぶらぶらと歩き、お腹がすけば目についたレストランで食事をし、
また歩き、疲れたらカフェで一休みをした。
その間、昨日の疲れがあるにも関わらず二人は楽しく会話し続けた。
ブーンは、はたから見れば二人は恋人同士に見えるだろうか、と何度か考えた。

午後5時になる少し前。
駅でお土産を買い込み高速バス乗り場に向かうと、既にバスが着いていた。
二人は運転手にチケットを渡し、半券を受け取って指定の席についた。

ξ゚?゚)ξ「はー、歩きっぱなしで疲れたねー」

( ^ω^)「喋りすぎて喉がガラガラだお」

荷物を網棚に乗せ、椅子に座って思いっきりのびる。

ξ゚?゚)ξ「つーかあのアーケードにあるコスメショップの店員うるさかったねー」

( ^ω^)「ちょっと失礼だったお」

ξ-?-)ξ「”お肌が疲れてらっしゃいますね”なんていきなり言われて、買う気にならないっつーの」

( ^ω^)「そう言うあの店員さんの方がよっぽど肌汚かったおwwwwww」

今日起こった事を二人で思い返している間に、バスは出発した。
楽しかった旅行ももうすぐ終わる。地元に着きバスを降りてツンと別れれば、またいつもの日常に戻る。

ξ-?-)ξ「帰りたくないなぁ」

ふとツンがもらした言葉に、ブーンも同意した。

( -ω-)「まだ千台にいたいお。やっぱり都会はいいお」

いけないと思いつつも、ついつい会話が愚痴っぽくなってしまう。
なんだか、どっと疲れが襲ってくるようだ。

ξ-?-)ξ「うーだめだ。寝ちゃいそう」

( -ω-)「俺も疲れたお。帰りはゆっくり寝ることにするお」

座席を少し倒し、ねぼけた声でおやすみ、と言い合い、二人は目を瞑った。
よっぽど疲れていたのだろう、二人はすぐに眠りについた。

バスが1時間ほど走ったところで、バスは一旦サービスエリアで休憩に入った。
それを知らせるアナウンスと、周りの人の話し声でブーンは目が覚めた。

( -ω-)「ん・・・・」

すっかり寝入ってしまった。今まで車内で眠るなんてことがなかったから、
体に少し違和感を感じた。
しかし、それ以上に何やら右肩が重い。
ゆっくり目を開けると、そこにはツンの顔があった。

(;^ω^)「ちょwwwwwツンwwwwwwww」

ツンはすやすやと小さな寝息を立てていた。

( ^ω^)(動いて起こすのも悪いけど・・・
      このままだと寝違えて首が痛くなるお)

( ^ω^)「ツン、起きるお、首痛くなるお」

ブーンはツンの耳元で小さな声で話し掛けた。

ξ-?-)ξ「んー・・・」

ツンは少し反応したが、完全に目が覚める事はなく、そのまま再びすやすやと寝始めてしまった。
ブーンは仕方なく、ツンの肩を抱いて席に戻そうとした。

ξ-?-)ξ「ん・・・」

ツンがまた少し反応した。今度は少しだけ目を開けた。

( ^ω^)「ツン起きたかお?体勢を・・・」

ξ-?-)ξ「・・・・・」

ツンは再び目を瞑り、今度はブーンの膝元にゆっくり倒れこんだ。
ブーンがツンを膝枕する体勢になった。

(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwツンwwwwwwwwww」

ツンはまたすやすやと寝息を立てて寝始めた。

(;^ω^)「いくらなんでも寝ぼけすぎだお」

そういえば、以前用事があって深夜にツンに電話をかけた時、長いコールの後電話に出たツンが
”本日のラストオーダーは終了致しました”とねぼけた声で言った直後に電話が切れたことがあった。
翌日ツンにその話をしたら、ツンはブーンから電話がきたことすら覚えていないということがあったのだ。

ブーンの膝の上で、ツンはぐっすりと眠っている。
思わず触れたくなるほど艶やかな長い髪を見つめている時、ブーンは体に異変を感じた。

(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwwwwwww
      ちんちんおっきしたおwwwwwwwwwww」

ズボンの股間の部分が固く盛り上がり、痛いくらいにパンパンに膨れ上がっている。
一日中歩いて疲れたせいか、それともツンが自分の膝の上で寝ているからなのか。
それにしても、どうしてこんなに体は正直なのだろう。

(;^ω^)(自分が嫌になるおwwwwww)

ツンの顔がこっちを向いていないのがせめてもの救いだった。
もしこの状態でツンが目が覚めたら、なんて言い訳をしたらいいか、全く思い浮かばない。

やがてツンが再びねぼけ半分で最初の位置に戻るまで、
ブーンは身動きができない状態が続いた。

数時間後、バスは無事目的地に到着した。
二人が荷物を持ってバスを降りると、眼前に見慣れた地元の街の風景が広がった。
無事帰ってこれて良かった、という安堵感よりも、現実に引き戻される不安感の方が大きかった。

バスの中、ブーンの膝枕で寝ていたツンはというと、
あれから一時間ほどあの体勢で眠った後に目を覚まし、無言のまま
元の体勢に戻り、再び眠った。
そして20ほど経った後に再び目覚め、今度は完全に起きたようで、ジュースを一口飲んだ後に
”今どこ?”とブーンに尋ねた。
ツンは、ブーンの膝枕で寝ていたことを全く覚えていないようで、今は何食わぬ顔でブーンの隣にいる。

ξ゚?゚)ξ「あー、帰ってきちゃったねー。もっと千台にいたかったなー」

ツンは名残惜しそうな表情でバスを見つめていた。

( ^ω^)「千台楽しかったお。また行きたいお」

ξ゚?゚)ξ「そうだね・・・」

( ^ω^)「ところでこれからどうするお?もう帰るかお?」

ξ゚?゚)ξ「うーん、どうしようかな」

( ^ω^)「ご飯食べてから帰らないかお?」

ξ゚?゚)ξ「もうそんな時間かー。いいわよ」

二人は近くのファミレスに入って食事を取った。そして1時間半後、二人は別れた。

( ^ω^)「ただいまだおー」

二日ぶりの我が家への帰宅。家の懐かしいにおいが鼻をくすぐる。
すごく心が落ち着くのを感じる。やはりなんといっても自分の家が一番だ。

J(‘ー`)し「ブーンおかえり」

( ^ω^)「かあちゃん、お土産だおー」

J(‘ー`)し「あら何かしら?」

母がお土産の入った紙袋の中を見ている間に、ブーンはバッグの中の洗濯物を洗濯機に放り込んだ。
リビングの方で母が嬉しそうにお土産のパールのピアスを眺めているのを見た後に、
洗濯機のスイッチを押し、2階の自分の部屋に行って部屋着に着替えた。

J(‘ー`)し「千台はどうだった?楽しかった?」

( ^ω^)「楽しかったお!チェミかっこよかったお!」

ブーンはその日夜遅くまで、母に千台での思い出話を聞かせた。
母はブーンの話を、ただ黙って嬉しそうに聞いていた。

3日後の水曜の夜、ブーンはドクオのバイト先のホーソンを訪ねた。

( ^ω^)「ドクオーお土産だおー」

ブーンがお土産の入った紙袋を差し出すと、ドクオはあからさまに嫌そうな顔をした。
口元がいつにも増して歪んでいる。

('A`)「お前、まさか荻の月とか言わねぇよな?」

ドクオが差し出された紙袋を、少し身をひいて嫌そうな目で見つめる。
ブーンは、そういえばドクオは荻の月が嫌いだったんだっけ、と思った。

(;^ω^)「いちおうアヌメイトで買った咲代のフィギュアだお・・・」

('A`*)「マジで!?サンキュー!!」

ドクオは紙袋を奪い取り、早速箱を開封し始めた。

(;^ω^)「ちょwwwwおまwwww仕事中だおwwwwwww」

('A`*)「やっぱパンツは白と水色のしましまだよな」

咲夜のフィギュアを下からの角度で眺めるドクオを見ながら、ブーンは
いっそのこと荻の月を押し付ければよかった、と思った。

('A`)「ところで、どうだった?」

( ^ω^)「千台楽しかったお!チェミかっこよかったお」

('A`)「そうじゃなくて」

( ^ω^)「?」

('A`)「ツンがさ」

(;^ω^)「!?」

急にドクオの口からツンの名前が出たからびっくりした。
なんて答えて良いか分からず、ブーンはただドクオの顔を見ていた。

('A`)「久々に会ったんだろ?なんか変わりなかったか?ってこと」

(;^ω^)「ああ・・・・別に変わりなかったお」

ブーンの脳裏に、バスの待合室に現れたツンの姿が浮んだ。
本当はツンはずっと大人っぽくなっていた。しかしブーンは、そんなツンを知っていることをなんとなく隠した。
ドクオの知らないツンを知っていたかった。

('A`)「ふーん。あいつももう3年生じゃん?進路はどうなってんの?」

(;^ω^)「・・・・・・・・・・知らないお」

('A`)「はぁ?お前ら一体何の話してたわけ?」

そう言われれば、ツンももう高校3年生だ。そろそろ進路をどうするか考えがまとまっていなければならない。
しかし、そんな話はツンとはしなかった。
あんなにたくさん会話をして盛り上がっていて、ツンのことでは知らないことはないと思うくらいたくさんお喋りしたのに、進路については1回も話題に出なかった。
それどころか、自分の今の職業についても聞かれなかった気がする。
聞き漏れはないと思うくらい会話をしたと思っていただけに、ブーンは少しショックを受けた。

('A`)「まぁ別にいいけどね」

ドクオは咲代のフィギュアを大切そうに箱にしまい、レジの後ろのカウンターの上に置いた。

ブーンはペットボトルのお茶を買い、ホーソンを出た。
実はドクオに話していないことがもう一つあった。それは・・・

ピピルピルピピ~♪

( ^ω^)「・・・・」
ピッ

『from:ツン
 件名:
 本文:今日もバイト疲れたー。
     ところで、駅で買った牛タン食べた?
     すっごくやわらかくて美味しかったよ 』

(*^ω^)「♪」

卒業式以来、ツンからチェミストリーのチケットの件で電話が来るまで一切連絡を取り合っていなかった二人だったが、
千台から帰って以来、毎日メール交換をするようになっていた。
しかも一日一通ではなく、最低でも四通くらいはやりとりしている。
今までもメールのやりとりはしていたが、以前にも増して頻繁にメールを送りあっている。
ブーンは、何かあればツンに真っ先にメールしようと思ったし、何もなくてもメールを送った。
きっとツンも同じ気持ちなのだろう。

すでに次に会う約束もしてある。
2日後の金曜日、ツンが学校が終わってからカラオケに行くことになっているのだ。
ブーンはその日が楽しみで仕方がなかった。
その気持ちが、余計にツンへのメールの本数を増やした。

2日後。ブーンは午前中にほした洗濯物を取り込んだ後、午後3時くらいに家を出た。
待ち合わせ場所の駅まではバスと徒歩で30分ほどでつくが、
途中本屋やCDショップに寄ったりしてゆっくり向かおうと思ったのだ。
そういえば、卒業以来一人でゆっくり街を歩くのは初めてかもしれない。
街頭の木々の鮮やかな新緑とそこに吹く爽やかな風は、まるで心がリフレッシュするようだ。

本屋に寄り週刊誌を立ち読みし、CDショップに入り新人アーティストの曲を試聴したりした後に待ち合わせの駅に向かい、
約束の4時半には駅前のベンチで缶コーヒーを飲みながらツンが来るのを待った。

約束の時間を5分ほどすぎたところで、遠くからツンが走ってくるのが見えた。
駆け足でブーンの元へ駆け寄る。ツンの制服姿を見るのは卒業式の日以来だ。

ξ;゚?゚)ξ「遅くなってごめん!帰りのHRがいつもより長引いちゃって・・・」

( ^ω^)「大丈夫だお。カラオケは5時からの予約だお」

ξ゚?゚)ξ「じゃあゆっくり行っても間に合うね。
     ちょっとジュース買って行ってもいい?」

( ^ω^)「じゃあ途中のミミストップに寄るお」

二人はミミストップに寄ってジュースを買い、雑誌を立ち読みした後、カラオケに向かった。
そこは、駅の近くにあり料金設定が安いことから以前からよく二人で利用していた。
いつもの機種を指定し、部屋に入る。

ξ゚?゚)ξ「ここ来るのも久々だねー」

( ^ω^)「前はよく二人で来てたお」

ツンはソファに座り、バッグからジュースを取り出す。
ブーンはテーブルの上に置いてある食事のメニューやカラオケの料金表を隅にひとまとめにして置く。
ブーンは、テーブルの上が散らかったままの状態が好きではなかった。よくこまめにゴミを片付けたりする。
一方ツンもブーン同様、あまり散らかっているのは好きではなかったが、ブーンが過剰なまでに片付けてくれるので
すっかり任せっきりにしていた。

(;^ω^)「ツンは本当にA型かお?」

ξ゚?゚)ξ「うちは父がOで母がABだからね。色々混ざってるんじゃない?よくわかんないけど。
      それより、O型って意外にきれい好きなのね」

( ^ω^)「うちは両親ともOで、二人ともおおざっぱだけどきれい好きだお」

ツンはふーん、と相槌をうちながら、カラオケのリモコンをブーンに差し出した。

ξ゚?゚)ξ「じゃあ、はい、あんたから歌って」

( ^ω^)「ちょwwwwなんでいつも俺からだおwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「こうゆうのは年上から歌うもんなのよ!」

またツンのわけのわからない屁理屈が飛び出した。
しかしこんなことは日常茶飯事なので、ブーンは軽く流しながら仕方なしに毎回先に曲を登録していた。

ξ゚?゚)ξ「ちょっと、飛来ケン歌ってよ」

( ^ω^)「わかったお。じゃあツンはまやや歌ってくれお」

ξ゚?゚)ξ「え?やだ」

(;^ω^)「・・・・・・・・・」

ツンはブーンにいつも曲のリクエストをしてくれるが、
ブーンがリクエストする曲はツンはいつも歌ってくれない。
ツン曰く、そういう気分ではないそうなのだが、何度突っぱねられてもブーンは歌って欲しい歌があればリクエストした。
20回に1回くらいの確率で歌ってくれることもあったので、油断禁物だった。

ブーンはとても不思議な感覚に陥っていた。

二人でカラオケに来るのは今まで何度もある。
しかし今日は、今までとは違ってものすごく楽しいというか・・・。
今までももちろん楽しかったのだが、それとは違って、もっとアドレナリンとかなんとかの興奮物質が脳内に溢れてるような、
そんな状態だった。

ツンに対しても、今までとは全く違った感情が芽生えている。
それは恋愛感情とかではなくて、もっともっと大切な何かだと思うのだが、
ブーンにはそれを上手く説明することも表現することもできなかった。

隣で楽しそうに歌うツンを見て、ブーンはツンと同じ気持ちになりたいと思うと同時に、
ツンも自分と同じ気持ちであって欲しいと思っていた。

ξ゚?゚)ξ「なんか久々に楽しかったー!」

二人は、駅前のバス停にあるベンチに座っていた。
駅の明るい照明が暗い夜道を照らしているが、そこにいる人はまばらだった。
仕事帰りのサラリーマンや、部活帰りのジャージ姿の高校生がいるくらいで、その市の中心駅とは思えないくらい閑散としている。

( ^ω^)「カラオケ久々だったお」

ξ゚?゚)ξ「そうだねー。私も久々だった。
      あんたが卒業してから、一緒に行く人いなくなったもん」

そう言いながらツンは携帯の画面を見ている。

ξ゚?゚)ξ「バス来るまであと15分か・・・」

相変わらずのバスの本数の少なさを実感する。
一時間の本数が一番多い路線では5~6本は出ていたが、
ツンが通学に利用するバスの路線は、通勤や通学など利用者が多い時間帯は一時間に2~3本で、
基本的には一時間に1~2本しかバスがない。
また、ブーンの利用する路線も同じような状況だった。

ξ゚?゚)ξ「千台行った時はあんなにバスも電車もあったのにねぇ」

( ^ω^)「やっぱり田舎とは違うお」

爽やかな夜風がロータリーの中心に聳え立つ大きな木の葉を揺らす。
車の通りも少ない。駅前だというのに、電車の発着を知らせるアナウンスが聞こえる以外は静まり返っている。

( ^ω^)「良ければまた遊ばないかお?またカラオケ行きたいお」

ξ゚?゚)ξ「いいねー、分かった。じゃあまたメールする」

( ^ω^)「ゲーセンも行きたいお。ドクオは完全に夜型になったからなかなか合わないんだお」

ξ゚?゚)ξ「そういやドクオは元気なの?」

( ^ω^)「元気そうだったお。こないだお土産渡しに行ったお」

ξ゚?゚)ξ「ああ!アヌメイトで買ったあの人形ね!喜んでた?」

( ^ω^)「すごく喜んでたお」

ξ゚?゚)ξ「どうせスカートの中覗いてたんでしょ」

(;^ω^)「その通りだお」

ξ゚?゚)ξ「かわんないねードクオ」

ツンはふふっと笑って空を見上げた。
そこには晴れ渡った夜空が広がり、一等星だけが浮き上がって存在を示している。
ブーンも同じように空を見上げた。

小さな星から大きな星、明るい星から、輝きの小さい星・・・。
今自分が目にしてる星以外にも、この夜空には星が数え切れないくらいたくさん瞬いているはずなのだが、
ここでは、一番明るく大きな星しか目にする事ができない。
それは、今のブーンの状態と同じだった。
生まれてきてから今まで、数え切れないほどの人と出逢ってきた。クラスメイトや生徒会役員を始め、一度しか会わなかった人や、毎日顔を合わせても一言も声を交わす事のなかった人、ただすれ違うだけの人。
こんなにたくさんの人と出逢ってきたが、今の自分の目に一番写るのは、今隣にいるツンである。
ツンが一番光り輝いて見え、まばゆすぎて見失いそうな錯覚にさえ陥る。
ツンと自分の関係をなんとしてでも繋ぎとめておきたい。ずっと。

( ^ω^)「ツン、また機会があったら千台行かないかお?」

ξ゚?゚)ξ「そうだねー。今度はお金いっぱい貯めて、服買いまくりたい!!」

無邪気に笑うツンに引き込まれそうになる。
時間が止まればいいと、初めて思った。

ξ゚?゚)ξ「あ、ようやくバス来た」

定刻通りにツンのバスがやってきた。停留所に停まり、バスの後方のドアが開いた。
ツンはバスに乗り込み、振り返ってブーンに軽く手を振る。

ξ゚?゚)ξ「じゃーまた」

( ^ω^)「ばいぶー」

ドアがしまり、バスは走り出した。
ブーンはそのバスが見えなくなるまで目で追い続けた。

翌日の土曜日、ブーンの家にギコが迎えに来た。
ブーンはいつものようにギコの車の助手席に乗り込んだ。

(゚Д゚)「よおー久し振り。どうだった?千台は」

( ^ω^)「楽しかったおwwwwこれお土産だお」

(゚Д゚)「え?そんな、気つかわなくていいのに・・・」

( ^ω^)「お休みくれたおかげで行けたお。受け取って欲しいお」

(゚Д゚)「サンキュー。会社着いたら早速開けてもいいか?」

( ^ω^)「おkwwwwww」

10分ほど車を走らせ、微糖園の事務所に到着した。
事務所の入り口にあるタイムカードを押して中に入り、作業着をはおる。
ギコは窓際のソファーに腰掛け、ブーンからもらったお土産の中身を取り出す。

(*゚Д゚)「おわあああああああああああああああ
    チェミのライターじゃねーか!!!!!!!!!」

それは、ブラックのボディに、チェミストリーのロゴがシルバーで箔押しされているライターだった。

(;^ω^)「zippoじゃなくてごめんお」

(*゚Д゚)「いいんだよ、別に高いのじゃなくて。
    つーかこれ超イカす!かっこいい!」

( ^ω^)「パンフレットは売り切れて買えなかったお」

(*゚Д゚)「普段使えるやつのほうがいいよ!マジでサンキュー」

ギコは相当嬉しかったようで、ライターを色んな角度で眺めては、
すげぇ、これすげぇ、と歓声をあげる。

(*゚Д゚)「これでタバコなんて吸っちゃったら、ドラッグ以上にイッちまうぜ」

そう言ってギコはズボンのポケットからタバコを取り出し、火をつけようとした。

川`~`)||「ギコさん!事務所内は禁煙ですよ!!」

(;゚Д゚)「えっ?ああ、わかってるよ」

事務のかおりに注意され、ギコは慌ててタバコをしまった。

(゚Д゚)「さっ、そろそろ行くかー」

ギコはソファから立ち上がり、作業着のファスナーをとじる。
そしてトラックの鍵を持ち、事務所を出た。
ブーンもその後に続き、ドリンクを積んだ後、補充へと向かった。
移動中の車内では、チェミのコンサートの話題で持ちきりだった。
ギコは興味深そうな表情で、うん、うんと聞き入り、時折歓声を上げた。

ツンとは、バイトがない放課後はカラオケに行ったり、
ツンがバイトの日は、バイト先まで迎えに行ってご飯を食べたりと、会う機会を重ねていった。
もちろん毎日のメールを欠かすことがなかった。

(゚∋゚)「ツンちゃんさっきは災難だったね・・・今日はあがっていいよ」

ξ゚?゚)ξ「いえ・・・お疲れ様でしたー」

ツンは少し気落ちした様子でロッカールームへ入り、自分のロッカーの鍵を開けた。

ξ#-?-)ξ「あの客マジでむかつく・・・」

この日、ツンはラストオーダー間際に来た若い男二人組みの客に、しつこく声をかけられた。
最終的に店長のトリィが接客に回ったが、非常に不愉快な思いをしたのだ。

ξ#゚?゚)ξ「怒りがおさまらない・・・」

ツンはバッグから携帯を取り出し、すぐさまブーンにメールを送った。

ξ゚?゚)ξ(”今日男の客にしつこく声かけられてすごくいやだった”・・・と)

メールを送信し、ツンは制服を着替え始めた。
少し経って、ブーンからの返信がきた。

『from:ブーン
件名:
本文:可愛いこはナンパされやすいお。
   気を取り直してツンも一緒にブーンするお』

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・」

”気を取り直して一緒にブーン”というのは、ツンが落ち込んでいたり気分が良くない時にブーンがつかう励ましの言葉だった。
今まで何度言われただろうか。逆にブーンの様子がいつもと違う時には、気を取り直してブーンでもしなさい、とツンが声を掛けたものだ。

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・」ピッピッ

『To:ブーン
件名:
本文:わかった。じゃあブーンして帰る(笑)』

ξ゚?゚)ξ(送信・・・と)

携帯をバッグに入れセーラー服に着替え、ロッカールームを出た。
タイムカードを押して外に出ると、冷たい風が吹いていた。5月とはいえまだ肌寒い。

ツンは、最近のブーンとの関係に違和感を感じていた。
千台から帰ってから、ブーンが自分に接するときの態度が今までとなんとなく違う気がする。
そして、自分のブーンに対する気持ちも、徐々に変化してきた。

ツンはさきほどブーンからきたメールを読み直していた。

『from:ブーン
件名:
本文:可愛いこはナンパされやすいお。
   気を取り直してツンも一緒にブーンするお』

ξ゚?゚)ξ(”可愛い”なんて、今まで一度も言った事なかったのに・・・)

もちろん自分のことをそう言ってくれて素直に嬉しい気持ちはあるのだが、
ブーンに言われるのは、この関係で言われるのは何か違う気がする。
上手く言えないけど・・・。

最近ブーンのことばかり考えるようになった。
出会ってから今までのことは勿論、仲違いした時のことや、卒業式でのこと。
そして、旅行でのこと・・・。
授業中やバイト中も、思い出してはニヤニヤしてしまう。
ブーンといた日々が、とても楽しいものになっている。

しかしツンはその気持ちを押し殺した。
ブーンは友達だ。大切な男友達だ。きっと仲が良すぎてこんな気持ちになってるんだ。
そう考えるようにしていた。

ξ゚?゚)ξ(大体あいつと私なんて釣り合わないわよ・・・!身長差もあるし、
     私みたいな性格の女がブーンと付き合ったところで、彼氏を尻に敷いてるみたいに思われるのも嫌だし、
     第一ジョルジュ君との仲を取り持ったあいつと付き合うなんてなんか変な気が・・・・)

ξ;゚?゚)ξ(・・・・・・・・・・ん?)

ξ///)ξ(つーか何考えてるの私・・・・)

ブーンのことを考えては先走ってしまう。
勝手に脳内で暴走しては、自爆する。ツンは最近考え事をしてると、こんなことばかり繰り返していた。

もしかして、自分はブーンのことが好きなのではないか、と最近思い始めた。
ブーンからメールが来ればすごく嬉しいし、ブーンに会うと何故か胸がドキドキするし、
何よりも一緒にいるのがものすごく楽しい。
ブーンに対してこんな感情を抱くのは初めてなので、ツンは戸惑っていた。

ξ;-?-)ξ(違う・・・好きとかそんなんじゃない。
      ただ一緒に一泊で旅行に行ったから、ちょっと気持ちが舞い上がってるだけだ。
      こんな気持ち、多分長続きはしない。きっとすぐ冷めるはず・・・・)

ツンは、一時の情熱だけで交際相手を簡単に決めるのは良くないと思っていた。
なぜなら、ジョルジュに恋愛感情を抱く前に付き合い始めたからだ。
ブーンが取り持ったから、というのもあるが、ツンはジョルジュを使って賭けたのだ。
消えない過去を持っている自分だが、男性と付き合っても意外に平気かもしない。
機会があればあのことを話してもいいが、隠したまま付き合い通せれば、それはそれでいいかもしれない。

そんな気持ちでジョルジュと付き合い始めたが、やがてツンはジョルジュのことを本気で好きになった。
しかし根底にある自分の気持ちが、自分もジョルジュも苦しめた。
打ち解けているように見せかけて壁を作っている自分に、ジョルジュは悩んだに違いない。
ジョルジュに一歩踏み出せなかったせいで、結局ジョルジュの気持ちは他に移ったし、自分もジョルジュを信じることができなかった。

付き合うなら、全て見せられる人がいい。ありのままの自分を受け止めてくれる人がいい。

そう考えると、今の状態でブーンのことを好きだと確信するには判断材料が少ない気がした。
うわついた気分のまま、もし付き合うことになっても、長続きしない気がする。

ξ-?-)ξ(・・・って勝手に考えても仕方ないか)

自宅までの道を歩いている時、ツンの携帯がなった。

ピルル~

『from:ブーン
件名:
本文:無事に帰れたかお?』

ξ*゚?゚)ξ「・・・・」

色々考えてはいるが、メールがくれば嬉しいことには変わりはない。
ツンは”ただいま。無事帰宅しました。”と打ち、送信した。

ξ゚?゚)ξ「晩御飯何にしようかなー」

冷蔵庫を開け、食材を確かめる。ナスと豚挽き肉が入っているから、トマトソースとあわせてパスタにでもしよう。
手馴れた手付きでソースを作り、パスタをゆでてお皿に盛り付ける。
最後にバルメザンチーズを振り掛けて、完成。
今日も一人っきりの食卓だ。

リビングのテレビをつけ、携帯を見るとブーンから”晩ご飯はハンバーグだったお”とメールがきていた。
ツンは”うちはナスと豚挽き肉のトマトソースパスタです”とメールを送った後、一人夕食を取り始めた。

今日は宿題がないから、ゆっくりお風呂に入ろう。
食事を取り終え、ぼーっとテレビを見ていると、ブーンからメールがきた。

『from:ブーン
件名:
本文:うまそうだおwwww俺も食べたいお。
   今度作ってくれお              』

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・」

最近、あきらかにこちらに好意を持っていると思わざるを得ないメールが多くなった。
ブーンは今までこんなメールを送ってくれたことはなかった。
考えるたびに否定してきたが、ブーンは自分のことが好きなのでは・・・?

ξ;゚?゚)ξ「・・・・・なわけないか。自意識過剰すぎ」

すぐにメールを返そうしたが、うまく言葉が浮んでこない。

ξ゚?゚)ξ「どうせ暇だしなぁ」

ツンは電話帳でブーンの名前を検索し、通話ボタンを押した。

ピピルピルピピ~♪

自分の部屋でソファに腰掛けながらテレビを見ているところに、ブーンの携帯がなった。

( ^ω^)「・・・・ツンからだお」

ブーンはすぐさま通話ボタンを押した。

( ^ω^)「もしもしだおー」

ξ゚?゚)ξ「あーもしもしー。今何してた?」

( ^ω^)「部屋でテレビ見てたお。どうしたんだお?」

ξ゚?゚)ξ「私もテレビ見てたんだけど、暇だったからさ」

( ^ω^)「そうかお」

ξ゚?゚)ξ「ハンバーグおいしかった?」

( ^ω^)「テラウマスだったおwwwwwww
      ツンのパスタはどうだったお?」

ξ゚?゚)ξ「うん、上手く出来たから美味しかったよ」

( ^ω^)「うはwwwwうまそうwwwwww食べたいおwwwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「いつも晩御飯一人だからねー。今度食べに来る?w」

(*^ω^)「ktkrwwwwwwww」

心がくすぐったくなるような会話が続く。
お互いの気分の高揚が手に取るように分かるほど、会話ははずんでいる。
電話がこんなに楽しいと思ったことがあっただろうか?

( ^ω^)「そういえば今日は大丈夫だったかお?」

ξ゚?゚)ξ「何が?」

( ^ω^)「ナンパだお」

ξ゚?゚)ξ「ああ、私はキッチンに回って、ホールは閉店まで店長がやってくれたから」

( ^ω^)「そうかお。大変だったお。
      困った時はブーンするお。俺がすぐ飛んでくおwwwwww」

ξ゚?゚)ξ「はは・・・・」

( ^ω^)「?」

ツンの様子が急に変わった。渇いた笑いを浮かべたあと、急に黙ってしまった。
何か気に触るようなことを言ってしまったのだろうか?

( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚?゚)ξ「ねぇ・・・・」

( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚?゚)ξ「あんた・・・・・私のこと好きなの?」

(;^ω^)「!!!!!!!!!」

ツンの突然の質問にブーンは驚いた。予想もしない言葉に、ブーンの心臓がきゅっと引き締まる感じがした。

(;^ω^)「な、なんだお急に・・・」

ξ*゚?゚)ξ「だっ、だって・・・・」

ξ*゚?゚)ξ「なんかさ、言動とかで・・・そう思ったのよ!」

(;^ω^)「あうー・・・・・」

一瞬止まりかけた心臓が、今度はすごい鼓動で動いている。
口から心臓が飛び出すのではないかと思う程、激しく鼓動している。

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・まぁ、私の勘違いなら別にいいんだけど・・・・」

(;^ω^)「・・・・・」

(;^ω^)(どうしよう、今ならごまかせるお?)

( ^ω^)(・・・・・・ごまかす?何を?)

ブーンは、今までのことを思い返した。
ツンのことを大切にしたいと思ったあの気持ちは嘘ではない。

ちょっとワガママで言葉が悪くて、すぐ人をパシリに使って、
でもすごく優しくて、思いやりがあって、無邪気で、明るくて、
感情の起伏が激しくて、ちょっとのことで落ち込んで、でもすぐ元気になって、
人には言えない傷を持っていて、でもそれをほのめかすそぶりは全然見せなくて、
何より笑顔がとびきりまぶしくて―。

そんなツンに対する気持ちを一言で表すとしたら・・・・。
この言葉以外、他に思い浮ばない。

( ^ω^)「ツン」

ξ゚?゚)ξ「?何よ?」

( ^ω^)「俺は、ツンのことが好きだお」

ξ;゚?゚)ξ「!!!!」

ツンはきっと狼狽しているだろう。
しかし、ずっと自分の中であやふやにしてきた気持ちをようやく言葉にできた。

(*^ω^)「俺はツンが大好きなんだお」

ξ///)ξ「なっ・・・!別に、私に言われたからって合わせなくてもいいわよ!」

(*^ω^)「本当だお!」

ξ///)ξ「・・・・・・・・」

(*^ω^)「信じてくれないのかお?」

ξ///)ξ「だって・・・私なんて超ワガママだし、口悪いし
      こんな女のどこがいいって言うのよ」

(*^ω^)「そういうのも全部ひっくるめて好きなんだお」

ξ///)ξ「・・・・・・っっ」

(*^ω^)「もう一回言うかお?俺は・・・」

ξ///)ξ「いや!・・・・・・・いい」

(*^ω^)「・・・・・・・・」

(*^ω^)「ツンは?ツンはどう思ってるのかお?
      俺のことは、友達のままかお?」

ξ///)ξ「・・・・・・・・・・」

( ^ω^)「もしそうならそれでいいお。
      ツンはすぐに男を受け入れられないのは分かってるお」

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・」

( ^ω^)「ツンが望むなら、友達に戻るお」

ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・」

その言葉を聞いて、ツンの背筋が冷たくなった。
確かに、中途半端な気持ちでブーンと付き合っても傷つくのはブーンだし、何より長続きしない。
だからと言って、簡単に友達に戻れるのだろうか?
好きだと告白されて、”お友達のままで”と断っても、今までのような関係を続けられるだろうか?

ツンの脳裏には、友達同士という関係すら崩壊している未来が浮んだ。
例え今までの関係に戻れたとしても、友達同士ということは、お互い自由に恋愛ができるということ。
ブーンは他の女の子と付き合うことになるだろうし、ツンにも彼氏ができるかもしれない。
しかし、ツンはブーンが他の女の子と一緒にいるのを想像したくなかった。
ブーンの隣にいるのは自分であって欲しい。
今までそうだったように、これからも。

ブーンを自分だけのものにしたい。独り占めしたい。

ξ゚?゚)ξ「ブーン」

( ^ω^)「なんだお?」

ξ///)ξ「わ・・・・・わたしも・・・・・」

( ^ω^)「?」

ξ///)ξ「あ・・・・あの・・・・・・わたしも・・・・・・ね・・・・・・・」

( ^ω^)「???」

ξ///)ξ「・・・・・・・・・・・・」

( ^ω^)「ツン?」

ξ///)ξ「・・・・・・・・・・・・・・・あんた、そんなに私が好きなら」

(;^ω^)「?」

ξ///)ξ「付き合ってあげても・・・・いいわよ・・・・」

(*^ω^)「ktkrwwwwwww」

ツンにとっては、これが精一杯の愛情表現だった。
ブーンには、この素直になりきれないツンの様子が手に取るように感じられた。
ツンはなんて不器用なのだろう。
そこがまた可愛いのだが・・・・。ちょっとからかってやろう。

( ^ω^)「でも、ツンに気がないなら、無理しなくていいお」

ξ゚?゚)ξ「・・・・・」

( ^ω^)「無理に付き合って欲しくないお。
      付き合うなら、俺のことを好きな人と付き合いたいお」

ξ;゚?゚)ξ「!!」

( ^ω^)「ツンの正直な気持ちを知りたいお。
      やっぱり、友達のままかお?」

ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・・」

( ^ω^)(ちょっと焦ってるおwwwwwwww)

ツンの様子は、電話越しでも手に取るように分かる。
きっと、どうやって自分の気持ちをうまく隠せるか、考えているところだろう。

( ^ω^)「ツン?やっぱり、友達のままで・・・・」

ξ;?;)ξ「・・・・・・・・・・うっ・・・・」

(;^ω^)「ツン!!??」

電話の向こうで、ツンが声を殺して泣き出した。
小さく鼻をすする音が聞こえる。少しからかいすぎたようだ。

(;^ω^)「ツン、ごめんお!イタズラが過ぎたお」

ξ;?;)ξ「・・・・・・・・・・・死ねばか」

(;^ω^)「許してくれお、悪かったお」

ξ;?;)ξ「そんな、急にどうなのかとか・・・聞かれたって・・・・・・分かるわけ・・・・ないじゃない・・・」

(;^ω^)「ツンもさっき”私のこと好きなの?”って聞いたお・・・」

ξ;?;)ξ「そうだけど・・・・」

(;^ω^)「ごめんお・・・・俺が悪かったお・・・泣き止んで欲しいお」

ξ;?;)ξ「・・・・・・・」

ξ-?-)ξ「・・・・・・・・・・」

ξ゚?゚)ξ「私があんたなんかの為にに涙流すわけないでしょ!!!」

(;^ω^)「ちょwwwww」

ξ#゚?゚)ξ「あんたねー、そんな意味わかんないことして!
     余計信じられなくなったわよ!!」

(;^ω^)「あうー」

ξ゚?゚)ξ「なんか証明してよ!私のこと好きだっていう証明!!」

(*^ω^)「ツン・・・・・・・好きだお(はぁと)」

ξ;゚?゚)ξ「キモイ!!!!!」

( ;ω;)「おー」

ξ゚?゚)ξ「もういいわよ!」

( ^ω^)「わかったお。今度会うお。そこで証明するお」

ξ゚?゚)ξ「え?」

( ^ω^)「失った信用を取り戻すお」

ξ゚?゚)ξ「え・・・・?そ、そんな・・・・」

( ^ω^)「そこで信じてもらえなかったら諦めるお」

ξ*゚?゚)ξ「わ・・・・わかった」

( ^ω^)「今度いつバイト休みかお?」

ξ*゚?゚)ξ「あ、えと・・・金曜日・・・明日」

( ^ω^)「ktkrwwwwタイムリーだお
      じゃあ明日、学校終わったら駅前にブーンで集合だお」

ξ゚?゚)ξ「うう・・・わかった
      ・・・・・・・・いや、ブーンはしないけどね!?」

( ^ω^)「じゃあそろそろ寝るお」

ξ゚?゚)ξ「うん」

( ^ω^)「それじゃあおやすみだおー」

ξ゚?゚)ξ「おやすみ・・・」

ピッ
( ^ω^)「うはwwww明日ツンと会えるのかおwwwww」

とりあえずいつものようにカラオケにでも行こうか、と考えながら、ブーンは着替えを持って風呂場へ向かった。

ξ゚?゚)ξ「はー・・・なんか疲れた・・・」

目に残る涙を拭き取り、ベッドに寄りかかる。
なんかすごいことが起きた気がするけど、頭がうまく回らない。

ξ゚?゚)ξ「とりあえずお風呂入ろうかな・・・」

ツンはチェストから着替えを取り出し、風呂場へ向かった。

翌日、ブーンはいつものように家事を済ませ、午後4時頃に家を出た。
そしてバスに乗り、駅に向かう。
4時半になる少し前に駅に着いた。ツンが来るのはもう少し後だろうか。
ブーンは自販機で缶コーヒーを買って駅前のベンチでツンを待つ。

ブーンは驚くほど冷静だった。昨晩あんなことを言ったが、あまりにも唐突すぎたせいか、いまいち現実感がないのが正直なところだ。
ベンチに座ってぼーっとしてると、後ろから話し掛けられた。

ξ゚?゚)ξ「・・・・お待たせ」

( ^ω^)「きたかお」

ξ゚?゚)ξ「どこ行くの?」

( ^ω^)「うーん、とりあえずカラオケはどうだお?」

ξ゚?゚)ξ「わかった」

空き缶をゴミ箱に捨て、いつものカラオケに向かう。
道中、ツンは昨晩のことを話題に出さなかった。何事もなかったかのようにブーンの隣を歩いている。

(;^ω^)(しまったお・・・・信用を取り戻すとか言ったけど、
      具体的にどうするか考えてなかったお)

まぁいいか、どうにかなるだろう。ツンが好きな気持ちは変わらないのだから。
そう考え、カラオケへと向かった。

ξ゚?゚)ξ「んー、何歌おうかなー」

( ^ω^)「まやや歌ってくれお」

ξ゚?゚)ξ「やだ」

(;^ω^)「うはwwwwwwwヒドスwwwwwwwww」

いつものように二人はカラオケを楽しんだ。
ブーンは我を忘れて思いっきり歌った。ツンもいつものように歌っていた。

しかし、ツンの様子はどこかいつもと違った。平静を装っているつもりなのだろうが、ちょっとよそよそしいというか、
ブーンに対しての態度がちょっと違う。
ブーンはそれを感じつつも、ツンが一応それを隠そうとしているようなので、特に気にすることなくカラオケを楽しんだ。

そして3時間経ち、二人はカラオケを後にした。

駅までの道のりを、二人は無言で歩いていた。
この道は車の通りが多き時と少ない時の差が激しく、、通りに面している店はほとんど夜7時か8時で閉まるので、
明かりは街頭だけで、駅前へ続く通りにしては寂しい場所だった。
今も車は時折1台、2台通るだけで、あとは人もまばらだ。

(;^ω^)(結局普通にカラオケを堪能しちゃったおwwwwwwww)

どこかでツンにアピールできるところがあると思ったのだが、なかなかうまくいかなかった。

( ^ω^)(・・・・まぁ、楽しかったからいいお)

ブーンはご機嫌な様子で足取り軽く歩いていた。
しかし、隣を歩くツンの表情は険しかった。

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・ちょっと」

急にツンが立ち止まり、ブーンに話し掛けた。それも、キツイ口調で。

( ^ω^)「?どうしたお?」

ξ゚?゚)ξ「・・・・・・あんたは一体何を考えてるの?」

(;^ω^)「?」

ξ゚?゚)ξ「昨日言ったこと、覚えてないの?」

( ^ω^)「覚えてるお。信用を取り戻すって、
     ツンが好きなことを証明するって言ったお」

ξ゚?゚)ξ「・・・・で?あんたは今日それを私にしたの?」

( ^ω^)「歌に愛を込めて歌ったお。伝わらなかったかお?」

ξ゚?゚)ξ「全然伝わらなかった」

(;^ω^)「あうーおかしいお・・・・」

ξ゚?゚)ξ「伝える気あるの?信用取り戻すんでしょ?」

( ^ω^)「わかったお」

ブーンはそう言い、ツンのそばに歩み寄った。
そしてツンの右手をつかみ、ぎゅっと握り締めた。

ξ*゚?゚)ξ「・・・・っ」

ツンが恥ずかしそうにうつむく。
やはり、こうして見るとツンは小さい。自分との身長差もある。
抱きしめたら、壊れてしまいそうだ。

( ^ω^)「あ。ツン、ちょっとこれ見て欲しいお」

ξ゚?゚)ξ「え?何?」

ツンが顔を上げた瞬間、ブーンの顔がゆっくり近付く。
そしてブーンは、ツンの額に優しく口付けた。

ξ///)ξ「!!!!!!」

ツンの顔がみるみる赤くなっていく。
ツンとつないでいる手が、急激に熱くなるのを感じた。

( ^ω^)「伝わったかお?」

ξ///)ξ「・・・・・・・・ん」

( ^ω^)「ktkrwwwwwww」

ブーンはツンとつないだ手をブンブンと振り回した。
ツンはもう片方の手をおでこにあてたままうつむいている。

( ^ω^)「うはwwwwwGJだおwwwwwww」

ブーンが一人喜ぶ隣で、ツンは上目使いでブーンを見た。

ξ*゚?゚)ξ「ちょっと・・・・」

( ^ω^)「ん?なんだお?」

ξ*゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・私・・・あんたのこと・・・・」

( ^ω^)「・・・」

ξ///)ξ「・・・・・・・すき、かも・・・・・・・」

(*^ω^)「うはwwwwwwwwwwww」

この言葉を待っていた!
まさか、ツンから言ってくれるなんて、思ってもみなかった。
ブーンは嬉しくなり、ツンに抱きついた。
ツンは突然のことにびっくりして目を丸くする。

ξ;゚?゚)ξ「ちょっと!急に・・・・」

(*^ω^)「俺もツンが好きだお!!!!!」

ξ///)ξ「・・・・・・・・・・っっっ!!!!」

こうして、二人はようやく結ばれた。
出会ってから約2年。それまで普通の友達として付き合ってきた二人が、
晴れて恋人同士になったのだ。

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幼馴染・親友・友達 | 【2015-09-27(Sun) 23:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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