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エスパーな社員

他人の多分修羅場って感じですが、流れ読まずに投下します。

私:巻き込まれた人
スズキムネオ(仮名)さん:会社の先輩
お嬢さん:巻き込んだ人

私が初めて務めた会社は、社員の数が片手の指で足りる零細企業です。
何故だか社長の前にしか電話が置いていない変わった会社でした。

ある日の事です。女性の声で電話がかかってきました。
「スズキいますか?」
「はい。少々お待ちください」
私用電話かな。社長の前で話しにくいだろうな。
そんな事を思いながら代わるとスズキさんはすぐに切っていました。
すると5分もたたずにまた鳴る電話。
「スズキいますか?」
「少々お待ちください」
また同じ女性でした。やはり速攻切られる電話。

すると先程より早いタイミングでやはり鳴る電話。
「ムネオいますか!?」
社名を名乗る前でした。しかもなんだか怒っています。
取り次ぐと、やはり速攻切られる電話。
戻ってきたスズキさんに私は今の事を報告しました。
何しろ電話は社長の前。
社長が電話と取って、あの調子でしたらスズキさんが困ります。
程なくまた電話が鳴りました。
「私ムネオの彼女なんですけど!!」
はぁ、左様で。会社宛ての電話でそんな事を言われても対処出来ません。
「しばらくお待ちください」
仕方がないので普通に電話を取り次ぎました。
スズキさんは電話はやっぱりすぐに切っていました。
なんだか疲れたので休憩をとる為に外に出て階段に出ると
階下の踊り場から女性の声が。
「ちょっとあんた!」
なんだかすごい気迫で睨まれてます。
敵意MAXの普段着のお嬢さん、雑居ビルにはかなり不似合いです。
「はい、なんでしょうか?」
…誰やねん、キミ。そう思いつつも私はお嬢さんに向き直りました。

とりあえず当り障りなく答える私にさらにヒートアップするお嬢さん。
「どういうつもり!?」
「あの、何の事でしょうか?」
見知らぬ人になじられる覚えなどない私が面食らっていると、
私の脇を通り抜けたスズキさんが割って入りました。
「まあまあまあまあ」
ああ、さっきの電話の相手か!
会社に乗り込むなんて常識知らずな真似に出たなぁ。
やや呆然としているとスズキさんはお嬢さんの背を押しながら
「いいから、いいから」とか階下に連れて行こうとしています。
抵抗する彼女は叫びました。
「私がムネオの彼女なのに!」
知らんがな。むしろ初対面でそれとわかったらエスパーだよ。
そもそも、私、ただの新入社員です。
先輩と後輩以外の何者でもありません。
誤解で当り散らされたって困ります。迷惑です。
「何か誤解なさってるようですけど、私、恋人いますよ」
それでも納得していない様子でお嬢さんは
スズキさんに連れられていきました。

しばらくして戻ってきたスズキさんに平謝りされました。
スズキさんが何か言ったのか私の言葉に納得したのかは不明ですが
以降お嬢さんから会社に電話がかかってくる事はありませんでした。
そして、その半年後、出来ちゃった結婚をされました。
報告を聞いた時、恐る恐るあの女性ですか? と尋ねた私に
慌てて力一杯否定するスズキさんが言うには
あのお嬢さんと、お付き合いした事は一度もなかったそうです。
当然奥様は別の方でした。
あ、最後になりますが、スズキさん
政治家の鈴木宗男とは似ても似つかない爽やか系の男性でした。

長くて申し訳ありませんでした。

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純愛・恋愛 | 【2017-03-01(Wed) 21:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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