2ntブログ

青空の虜

第1話□夏休みの午後 ※

[1/3㌻]

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2年生の夏休みの午後1時。陽菜は、学校の最上階にある用具室に呼び出された。用具室とは名ばかりの物置で、使わなくなった机や椅子が雑然と積まれている。
薄暗い室内。自分を呼び出した同級生の美沙樹たち3人の姿はない。
仕方なく、「用具室につきましたけど」とメールを入れてみる。
返信メールの変わりに電話が鳴った。美沙樹からだ。
「あ、陽菜、そこで全裸になってー」
美沙樹の楽しげな声。うしろから笑い声が重なる。由香里と綾奈もいるに違いない。
「ここでですか?」
「そうそう。さっさと脱ぎなよ。わたしらが来るまでに全裸になってなかったら、洒落になんないよ?」
洒落になんないよ?は美沙樹の口癖だ。逆らえば、ひどい目にあわせる、と言っているだと経験でわかる。
「わかりました」
陽菜は、声を震わせながら、そう答える。
「全部脱いだら、電話してきな」
そう残して、電話が切れた。
陽菜は制服を脱ぐ。ブラウスもブラも脱ぎ、あたりをきょろきょろしながらショーツも脱いだ。
ほこりを払った机の上に、衣服を置き、
「脱ぎました」
と電話した。
「それじゃさ、近くにさ、銀色の箱みたいなカバンあんの、わかる?」
「カバン…?」
ドラマや映画で見る現金を入れるアタッシュケースを小さくしたようなものがあった。
「それにさ、脱いだもの全部入れて」
「ここに…ですか?」
「いいから、さっさとやれっつってんだろ」
はいっ、と返事をして、カバンの中に服を詰め込む。
「靴も、靴下もだから」
「え?」
「全裸っつったろ?」
美沙樹ひっどーい、とかそんな笑い声が聞こえる。
「入れたか?」
「はい」
見てるわけではないので、嘘をつくこともできたが、後から確認しにこられたら、大変なことになる。
「じゃあ、フタ閉めて」
素直にいうことを聞くしかない。ばたん、とフタが閉まり、かちん、と金属音がした。
「まさか??」
あることに気がつき、慌ててフタを開けようとする。開かない!
それを見透かしたように笑い声。
「まじ、閉めたの? あーあ。やっちまったなー」
「ど…どうやったら開くの?」
声が泣き声になる。その間もフタについたボタンを押してみたりするが、一向に開く気配はない。
「用具室から出てこいよ。出てきたら教えてやる」
「え?」
だって、今、私、裸で…
そんな言い訳が通るようなら、最初から裸になんてさせていないだろう。
「ほら、早く出てこないと教えるのやめるよ。ごー、よん…」
それがカウントダウンだと気づいて、陽菜はドアノブに手をかけた。
周囲をうかがうようにゆっくりと…
「いやっ」
その手が掴まれ、廊下に引きずり出された。
声に出せない悲鳴を上げて陽菜は、その場にしゃがみこむ。それを囲むように美沙樹たちの笑い声。
でもよかった、と陽菜は、少しだけほっとした。そこにいたのはいつもの虐めメンバー3人だけだった。
「さて、よく聞きなよ?」
美沙樹が、陽菜の髪をわしづかみにして顔を上げさせる。
「あの箱を開けるには、鍵が必要です」
それは、陽菜にもなんとなく想像できた。
「その鍵は、玄関のあんたの靴箱の中にあります」
まさか、それを…
「いってることわかるよね? あんたはそれを取りにいってこないと、服を着れません。あと、携帯も没収。助け呼ばれてもつまんないし」
美沙樹は、陽菜が握っていた携帯を奪い取る。
「ってか、陽菜を助けるやつなんて、いなくね?」
由香里と綾奈が笑い転げる。
「ま、そういうことで、よーい、スタート」
由香里が、しゃがんだままの陽菜の背中を押すと、陽菜はバランスを失って、ごろん、と転がった。
さらに高くなる笑い声。
「ほら、さっさといっといで」
胸と股間を隠しながら、陽菜は早足でその場を後にした。
「ケツ、丸見え~」
美沙樹たちの声に、陽菜は泣きそうになった。


第1話□夏休みの午後 ※

[2/3㌻]

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スタート地点の用具室は最上階、5階にある。この階は教室などなく、他の階より狭い。
すぐに階段をおりはじめる。この階段は、建物の西端で、玄関は東端にある。
校舎の作りは双子の建物を3つの渡り廊下で繋いでいて、真上から見ると「日」の形をしている。
幸い、用具室と玄関は、同じ建物にあった。
単純な方法は、このまま階段を1階まで降り、まっすぐ玄関へ向かえばすむ。
だが1階は、ほとんどガラス張りに近い状態で、外から廊下が丸見えになる。
外を歩く生徒やグラウンドで練習する生徒たちに、絶対に見つかる。
しかも職員室の前を通るのだ。教師たちにこんな姿を…虐められているところを見つかりたくない。
やはり2~4階の教室がある階を通らなければならない。
陽菜は、4階まで降りてきた。3年生の階。受験を控えた生徒たちのため、希望者を集めて夏期講習会が開かれている。
全部の教室を使ってるわけではないが、この廊下を歩くのは危険だ。
3階を目指す。夏だというのに、リノリウムの床は冷たく、足の裏が痛くなってくる。
その痛みが、自分は全裸であると自覚させる。
階段の段を降りるたびに乳房が揺れ、根元に鈍い痛み。片手で抑えて和らげる。
もう片方の手で股間を押さえる。1週間ほど前にそられた陰毛が、中途半端にのび、ひげのようにちくちくと手のひらを刺す。
3階。2年生はこの時間いないはず。補習授業は午前中に終わっている。陽菜自身がそれを受けていたから、わかる。
そのはずなのに、廊下で笑い声が聞こえた。
そっと顔だけ出してのぞく。誰もいない。どうやら、どこかの教室で雑談しているらしい。ドアが開けっ放しなのだろう。
この階も、廊下を使えない。
もうひとつ降りようか、と思ったとき、足音が聞こえた。
どこ? 廊下じゃない。足元? 下の階からだ。
どのぐらい陽菜と離れているのかわからないが、とにかくあがってきている。話し声も聞こえる。ひとりじゃない。
勘の鋭いクラスメイトは、陽菜が虐められていることを知っているだろうが、他の生徒たちは知らない。
そんな状態で、この姿を見られたら、ただの変態だと思われる。
陽菜は、意を決して廊下を越え、階段正面の渡り廊下に飛び込んだ。
渡り廊下は、上半分がガラス張り状態といっていいほど、窓だらけだ。
姿勢を低くして走る。乳房やお尻が揺れる。
渡り廊下は中ほどまで行くと、ちょっとした展望スペースのような感じで、左右に広がっている。
その広がりの中に入れば、壁の陰で階段からは見えなくなる。
陽菜は、展望スペースに飛び込んだ。近づいてくる話し声と足音。
こっちにこないで。
陽菜は膝を抱えるようにしてしゃがみこんでいる。抱え込んだ膝に押し潰された胸の先が、じんじんと熱を持つ。
展望スペースと呼ばれるだけあって、そこは、足元までの巨大な窓になっている。向こう側の渡り廊下に人がいたら、見られてしまうだろう。
話し声の主たちがこちらに来ないように祈りながら、視線がふと、下を向く。
中庭に何人なの生徒がいる。お願い、見上げたりしないで。
話し声が、小さくなる。さらに上の階に行ったのか、廊下を曲がったのか。とにかく助かった。
普通教室がメインの建物と向かい合った双子のほうは、特殊教室がメインだ。
渡り廊下をこのまま渡って、そっちを通ったほうがいいかもしれない。
科学室、物理室、地学室、数学室… およそ夏休みの部活では使われないだろう教室の前を陽菜は、姿勢を低くして走る。
普通に立つと、窓から見えてしまう。下から見えないように窓から離れても、向かい合った普通教室棟の廊下からは見えるだろう。
中央の渡り廊下に来た。ここにも階段がある。ここから降りようか?そっとのぞく。
踊り場から下側に、数人の生徒が座っている。ブラスバンド部の練習…というより雑談だ。
「そういうのは、音楽室でやって」
階段から見上げられないように、渡り廊下側を走り抜けた。
なんとか建物の東側までこれた。あとは階段をおりていけば、玄関がある。
静かに、けれど早足で、壁伝いに階段を降りる。2階はなんとか大丈夫だった。
そして、1階へ。


第1話□夏休みの午後 ※

[3/3㌻]

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踊り場でしゃがみこみ、玄関の様子をそっと伺う。誰もいない。しかし、外に数人の生徒の姿を見かけた。踊り場から下の階段は、外から丸見えだ。

陽菜は、美沙樹たちの虐めが、2年生になって酷さをましたように感じていた。1年生の頃は使い走りであったり、同級生の前でスカートをめくられたり、安直な虐めだったはずだ。
それが徐々に、性的なものに変わってきている。
1年の時は膝より少し上ぐらいの丈だったスカートも、強引に改造され、股下数センチしかない。
短パンをはいていても、脚が見られることに恥ずかしがっていると知ると、今度は短パンをはくことも禁止された。こっそりはいてきても、朝から待ち伏せされ、剥ぎ取られる。
3人の前で全裸にされたのは、ゴールデンウイーク明けだ。
最初は全裸に向かれただけですんだが、数日後には、さまざまなポーズを強要され、それを写メに撮られた。
夏休み前にはついに、陰毛を剃られた。両脚を由香里と綾奈に押さえられ、美沙樹が丁寧に剃っていく。
「陰毛硬い」とか「つるつるにしたら赤ちゃんみたい」と散々笑われ、誰にも見せたくない部分をすべて確認された。

そしてついに今日は、全裸で学校の中を走らされる羽目になった。
自分ひとり、どうしてこんな目にあうのか。幾度となく考え、答えの出せない疑問。それを思うと涙が溢れそうになる。
だが、ここで泣いて、もたもたしていられない。
練習が休憩に入れば、外の生徒たちも水飲みやトイレのために玄関にきてしまう。
陽菜は、思い切って階段を駆け下りた。
誰にも気づかれず、シューズロッカーの陰に飛び込めた。気づかれなかったのか、気づかれたことに自分が気づかなかったのか、そんなことはどうでもいい。
とにかく玄関まで来た。
玄関も当然ガラス張りに近いから、角度によっては外から見えてしまう。真正面が正門だから、敷地の外を歩く人に見つかるかもしれない。
自分のロッカーを開ける。
「あった…」
美沙樹たちは、約束を守ってくれた。安堵が生まれる。
「なに、陽菜、こんなところで全裸になってるの?」
わざとらしい大声が、玄関で響いた。
美沙樹が、先回りしていたのだ。
「いやぁっ」
陽菜はシューズロッカーの陰から飛び出る。
そとにいた数人の生徒たちと目が合う。とっさに顔を隠す。自分が誰か、ばれたくなかった。
両手で顔を隠し、乳房も股間もお尻もさらしながら、階段を駆け上がる。
2階で1年生の女の子ふたりとすれ違った。小さな悲鳴。かまってられない。
3階。普通教室の廊下を駆け抜ける。胸もお尻も、まるでここに恥ずかしい部分がありますよ、と自己主張するかのように激しく揺れる。
息が切れる。でも、立ち止まれない。
開いたままのドアの前を通過した。男子生徒の歓声。声が背中にぶつかる。
「陽菜ちゃん、何してんのー」
クラスメイトだ。女の子の笑い声まで聞こえる。きっと廊下に出て、陽菜の後姿を見てるに違いない。
陽菜は、泣きながら階段を駆け上がった。4階を越えたところで、転んだ。
むき出しのすねを、階段の角で打った。それでも、駆け上がった。
用具室に辿り着く。
「どうしたの、そんなに息切らして?」
「もしかして、校内、全裸で走り回って、欲情しちゃったとか?」
由香里と綾奈の声もかまわず、用具室に飛び込む。
鍵を差し込むと、フタはちゃんと開いた。
服を取り出す。
「??」
下着がない。ブラもショーツも。しかも、ベストまで。
「そんな…」
ブラウスは薄い黄色だったが、当然透けるだろう。スカートは、強制的に短く改造され、ちょっとした動きや風で下着が見える丈になっている。
「これで、帰るの…」
全裸のまま、わずかな衣服を抱きしめ、陽菜はその場にへたり込んだ。
「どうしたの、陽菜」
「はやく一緒に帰ろう」
「待ってるからね」
美沙樹たちの楽しげな声が、廊下から聞こえた。

【 完 】


第2話□ペイント ※

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放課後になると一斉に文化祭の準備が始まる。
陽菜が美沙樹だちに呼び出されたのは、5時になろうかというころだった。つまり、美沙樹たちは1時間と保たずに、文化祭準備に飽きたのだ。
最上階の用具室に呼び出される。
この時期、大抵の教室は文化祭の準備に使われ、人の出入りがあるのだが、この用具室は、その対象外だ。
雑然と積まれた古い机や椅子が邪魔をして、作業スペースなどとれないし、作りかけの大道具を保管しておくにしても、最上階まで運んでくる者はいない。
陽菜は、机4つを併せてできた上に上らされていた。
四つん這いの姿勢。美沙樹たちは後ろから眺めている。
当たり前のように美沙樹の手が、陽菜のウエストにかかり、スカートのホックをはずした。
「やめてください」
声に力はない。陽菜の拒絶の言葉など、この3人には届かないのだ。
ファスナーをおろされると、すとん、とスカートは膝元に落ちた。
白いコットンのショーツに包まれたお尻がさらされる。
綾奈がショーツのゴムを引っ張り、ぺちん、と肌を打つ。
「んっ」
びくっ、と陽菜の身体が跳ねた。途端に三人の笑い声。
次の瞬間、ずるっ、とショーツがずり下げられた。
「いやっ」
慌てて下着を押さえようとして、バランスが崩れる。机ががたがたと音を立てる。古い机の脚は、長さが狂っていて不安定だった。
「どうして無駄だってわかってて、抵抗しようとするかなぁ」
美沙樹が少しあきれた声を出す。
「あんたの臭いマ○コも汚いケツの穴も、見飽きるくらい見てるんだから」
「そうそう。写メだってかなりとったしね」
美沙樹の言葉に由香里が続ける。
「おとなしく私らのおもちゃになってなさい」
綾奈が、デコピンのように陽菜のクリトリスを勢いよく弾いた。
「んあっ」
激痛の苦鳴をこらえる。あまり騒げば、誰かがきてしまう。
こんな惨めな姿、誰にも見つかりたくない。
「私らなんかより断然短いスカートはいて、毎日みんなにパンツ見せてる気分はどう?」
陽菜のスカートを勝手に短く改造した張本人、美沙樹がきいてくる。
短パンなんて、当然はくことを許されない。
「恥ずかしいです」
声も震えた。
「恥ずかしいの?恥ずかしいのに、自分からパンツ見せてるんだ?恥ずかしいの好きなんだ」
言葉で責めながら、ぺちぺちとお尻をたたいてくる。
「違います」
いくら否定しても、最後には、自分が変態だと力付くで認めさせられてしまう。わかっているけど、認めたくなかった。
「ふーん。じゃあ、今日はパンツ見えないように、短パンはかせてあげる」
え?どういうことだろう?
背後で、かちゃかちゃと音が聞こえた。
「え?何?」
振り返ろうとすると、
「いいから、前見てじっとしてな」
お尻の肉を思い切りつねられた。
何をされるのか予想できないままに、むき出しのお尻を相手に突き出しているのは、かなり不安だった。
「ひぁっ」
突然の感触に、陽菜は思わず声を上げた。冷たくねっとりとした感触が、お尻を撫でたのだ。
そしてその感触が広がる度に、ちくちくと何かが、肌を浅く突く。
毛先?
「何を…」
そういいかけたときには、何が起きているか理解し始めていた。
「短パンはかせてやってるんじゃない」
ペンキばけを持った美沙樹の手が見えた。陽菜のお尻に美沙樹たちが、灰色の塗料を塗っているのだ。
「陽菜のケツの穴の周り色が濃いから、重ね塗りしないとだめじゃない?」
肛門の上を何度も刷毛が往復する。
「んっ」
思わず、声が漏れた。
「あはは。こいつ、ケツの穴いじられて感じてるよっ」
「そっちもいけるんだ!すごい淫乱だねー」
ただ少しくすぐったかっただけなのに…
「マ○コも汚いから塗っておく?」
「いっそピンクに、とか?」
笑いながら3人は、陽菜の白い肌を塗りつぶしていく。
後ろが終わると、正面を向かされ、前を塗られた。陰毛の上は何度も塗られ、ごわごわと肌に張り付いた。
「よし、できた」
文化祭の準備は雑な3人にしては丁寧な仕上がり。
「近くで見なかったら、はいてるように見えるよ」
自分たちでもかなり満足なできのようだ。
「ほら、よくできてるよね」
記念に、と何枚か撮られた写メを見せられた。陽菜の下半身は短パンをはいているように、きれいに灰色に塗られていた。
ただ一カ所、性器の部分を覗いて。
「陽菜に短パンをはかせたし、みんなで帰ろう」
陽菜は、3人が何をしようとしているか気づいて、血の気が引いていった。


第2話□ペイント ※

[2/5㌻]

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陽菜は美沙樹たちにつれられ駐輪場にでた。
「短パン」の上にスカートをはいている。それは、短パンのままでも大丈夫だ、という3人に土下座をしてはかせてもらったのだ。
自転車は2台。美沙樹のこぐ自転車の後ろに陽菜。由香里の自転車に綾奈が乗る。
「陽菜は立ち乗りだから」
絶望的な宣言だった。
陽菜を乗せた美沙樹が先頭。後ろに由香里たちがついた。
陽菜は片手でスカートを押さえようとするが、段差があったり自転車がふらついたりするので、両手で美沙樹の肩を掴んでいないと危ない。
「美沙樹、スピードだし過ぎだって」
「陽菜のスカート、めくれてるよっ」
わざわざ周囲に聞こえるような大声で叫ばなくても、陽菜にはわかる。
スカートをめくりあげる風は、容赦なくお尻を撫で、開き気味になった脚の間も…そこだけはペイントされていない股間も撫で回しているのだ。
綾奈たちの声に反応したのか、通り過ぎる人々の視線がこちらを向く。
同じ方向に向かって歩く中高生。今は下校時刻だ。他校の生徒もたくさんいる。
スーツ姿のサラリーマン、買い物帰りの主婦、小学生。行き交う車の窓から見える顔も、こちらを見ている気がする。
大半の人が、ちらっとこちらを見るだけだ。陽菜のことなど風景として流れすぎ、まさかノーパンでいるとはわからないだろう。
だが、同じ方向に自転車で進む者など、じっとこちらを見つめることができる者は、陽菜の下半身の不自然さに気づいているかもしれない。
しかも歩行者より一段高い位置にいるのだ。もしかしたら性器も見えているかも…
そう考えてしまうと、泣きたいぐらいの恥ずかしさで、身体中が熱くなる。
自転車で走ったときに感じる心地よい風程度では、この熱を冷ますことはできなかった。
大きな交差点にさしかかった。美沙樹がブレーキを使ってスピードを緩めていく。渡りたい信号は赤。自転車が止まれば、陽菜は自転車から降りなければならない。
すでに信号待ちしている男女がいる。車道を挟んで向かい側にも数人いる。
降りるときには、片足ずつ地面につけなければならない。飛び降りるような要領で、両足をいっぺんに、という方法も考えられるが、バランスを崩しそうで怖い。
左足を自転車にかけたまま、右足をおろす。股が、大きく開く。持ち上がりそうになるスカートを片手で押さえ込む。
「すぐ青になるから、片足かけておきな」
絶望的な命令。
車道を挟んでいるとはいえ、見ず知らずの人たちが正面にいるのに、大きく股を開いているなんて。
性器はスカートと手で隠せているはず。けれど、お尻は…
車が通り過ぎる度、強い風が肛門をなめていく。そのたびにめくれるスカートの後ろ。
みんなにお尻見られてる…
なるべく周りの人たちと目を合わさないようにしながら、
「早く青になって…早く…早く…」
そればかりを繰り返して祈った。
祈りを聞いてもらえたとは到底思えない遅さで、車道の信号が黄色に、そして赤に変わる。
意を決して陽菜は、スカートから手を離し、美沙樹の肩に手をかける。
スカートがずれ、股間が露わになる。陽菜の視線からでも、塗料の塗られていない部分が見えた。
「見られちゃう」
陽菜が地面を蹴った瞬間、美沙樹が、自転車をスタートさせた。自転車を発進させることでバランスを保ちながら、後ろの人間の立ち乗りができるようになる…だった。
まさに絶妙な、タイミングのずれ。陽菜は、足をかけ損ねて、再び大股を開いてしまった。
「早く乗りなっ」
美沙樹も、ちょっとびっくりした顔をしている。わざとではないのだ。
「うっ、うん」
ゆっくり進む自転車に合わせて陽菜は、再チャレンジする。動揺が、2度目の失敗を招いた。
「ちょ、陽菜、何やってんの?」
美沙樹は、驚きと笑いの混じった声を上げる。
「ごめ…ごめんっ…えっ」
また踏み外す。
陽菜は自転車に片足だけかけた、大また開きのケンケンのような状態で、横断歩道を進んでしまう。
乗るためにジャンプしているのだから、スカートはその度に大きくめくれ、隠れてほしいすべてがあらわになる。
反対側からきた男子高校生の集団とすれ違った。後ろから大きな歓声。みんな、見たんだ…
信号待ちの車の中からも、きっと見てる。
追い抜いていった他校の女子が、変なものでも見るかのような目つきで1度振り返った。
「ちょっと、やりすぎだって」
美沙樹たちも予想外の展開なのだろう。大盛り上がりで笑ってる。
後から考えれば、いったん両足を下ろして、横断歩道を渡りきってから改めて乗ればよかったのに、そんなことも思いつかなかった。



第2話□ペイント ※

[3/5㌻]

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結局、横断歩道を渡り終える少し前で、ようやく乗ることができた。
そのまま自転車は、橋に差し掛かった。
「何、泣いてんの?」
自転車をこぐ美沙樹が、いつもの冷たい口調で陽菜を見上げた。
スカートを押さえるはずの片手で、涙をぬぐい、
「泣いてない」
陽菜は、少し微笑んでしまった。いつもと変わらぬ口調の美沙樹の瞳に、陽菜を案ずるような暖かさを見つけたような気がした。
「そ。じゃあ、スピード上げるから、しっかりつかまってなよ」
橋は半ばまで軽い上り坂だ。美沙樹も立ち漕ぎ出なければ、ふたり分を支えられない。
下から吹き上げる風は、容赦なく、陽菜のスカートをめくりあげる。陽菜に抑える余裕はない。
橋を渡るまでの数分間、完全に下半身をさらし続けなければならない。
せめて性器だけでも気づかれないように…
そうすれば、短パンをはいているように見てもらえるはず。
陽菜は、必死に内腿を閉じ、力を込めた。
「んっ ぁ…」
その途端に走る、むずむずっとした…気持ちよさ…
思わず力が緩む。
そして気づいた。
美沙樹のスカートもめくれあがっている。しかも、短パンをはいていない。ピンクの可愛らしいショーツが、見え隠れする。
「美沙樹さん…見えてるよ…」
「たまには、いいんじゃない」
よくわからない返事をされた。
後ろから、ふたり乗りをあきらめた由香里と綾奈の、待て、という笑い声が聞こえた。

太陽は黄金色の光をにじませ、随分と西に降りていたが、それでも公園は明るかった。
今日一日の総決算とばかりにはしゃぎまわる子供たち。暗くなるのを待ちきれない高校生のカップル。男子の方は、陽菜たちと同じ学校だ。
樹木に溶けいりそうなほど、静かに散歩する老人もいる。
そんな公園に、美沙樹たちは陽菜を連れてきた。
学校で施された短パンのボディペインティングを多くの人にさらしながら、陽菜はここまでやってきた。
緊張と恥ずかしさとが身体も心も責め立て、疲れてしまったのか、油断すると放心してしまいそうだ。
「学校からバレーボール持ってきたさ」
綾奈が自慢げに鞄から白いボールを取り出す。
「かっぱらいだー」
由香里が、からかう。
「明日返すよ。それより、バレーしよ」
「いいね」
ちょっと何か思いついた顔で、美沙樹が話に乗ってきた。
「陽菜、ジャージ借りるね」
陽菜の返事も待たず、勝手に陽菜のバッグを開け、ジャージのズボンを取り出す。
「パンツ見えるの気にしながらじゃ、本気になれないしね」
陽菜のジャージをはくと、スカートを脱いだ。
上が制服のブラウス、下がジャージというちぐはぐな出で立ちだが、美沙樹はいっこうに気にしていない。
「美沙樹、なに、本気になってるの?」
ちょっとびっくりした顔で、由香里が聞いてきた。
「真剣勝負だよ。負けたら、あそこのコンビニ行ってアイスを買ってくる」
「おっ。そういうことでしたら、負けませんよ」
綾奈も乗ってくる。スカートの中に隠れるようにまくりあげていたジャージの裾をおろす。スカートを脱ぐと、膝丈のジャージ姿だ。
「まじで?ってか、私の勝ちは不動だよ?」
中学時代バレー部だった由香里が、余裕の笑みを浮かべる。
「ほら、陽菜、なに突っ立ってんの?あんたも参加だよ」
美沙樹が陽菜によってくる。
「スカート脱ぎな」
耳元で命令する。
「ここで…?」
周囲にはたくさんの公園利用者。特にこちらのことを注目している人間はいないとはいえ、こんな見晴らしのいい場所で、下半身裸になるなんて。
「短パンはいてるんだから、いいでしょ?私らだって、スカート脱いだし」
ふたりのやりとりを聞いていた綾奈が、なるほど、という顔をする。
どうやら美沙樹が、急に思いついたことらしい。
「私はこのままで良いや」
由香里がスカートをめくってみせる。ブルマにも見えるぴったりとした短パンだった。
「それは、ちょっと脱げないよね。けど、陽菜は普通の短パンだし、脱いだ方が楽だよ」
「そうそう。間違って破けたら、明日から大変だよ。スカート、それしかないでしょ」
美沙樹の口調は、遠回しに、脱がなかったらスカートを破く、と言っているようだった。


第2話□ペイント ※

[4/5㌻]

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「わかりました」
おそるおそる陽菜はスカートを脱ぐ。灰色の塗料でペイントされた下半身があらわになる。
震える手で持つスカートを綾奈が奪い、自分の鞄にしまう。
「あっ、えっ」
あまりの手際の良さに、陽菜が反応できないでいると、笑い声があがった。
由香里が指さすのは、陽菜の股間。
「何?」
陽菜は自分の股間を見て愕然とした。
「なに、陽菜。我慢できずに私の自転車の上でオナったの?」
陽菜の陰毛を塗り潰していた塗料がはげ落ちている。
移動中、股間を隠すためスカートごと手で押さえていたのだが、それでこすれてしまったのだ。
特に陰毛の上は、強引に重ね塗りをして塗り潰ししていただけなので、完全に乾くと、ぼろぼろと崩れ落ちてくる。
塗料のかすをまとわりつかせた陰毛の縮れ具合が、かなり惨めに見える。
「ま、遠くからならわからないって」
美沙樹が簡単に言ってのける。
確かにペイントが完全にはがれたわけではなく、重ね塗りの部分がこすれ、塗料の中に埋もれていた陰毛が飛び出てきた感じだ。遠目ならわかりづらいかもしれない。
「内腿のところもはげてきてるけどね」
見ると、そちらは泣き顔のメイクのような落ち方。何かで濡れて、塗料が溶け崩れたのだ。
その原因は…
「みんなにお尻見られて、ま○こから涎垂れちゃったんだ。仕方ない変態だね」
美沙樹が嬉しそうに微笑む。
「違うの。これは…」
必死に否定しようと首を横に振るが、言葉が浮かんでこない。なぜ、身体がこんな風になっているのか、自分自身のことなのにわからない。
「また、すぐそうやって涙目になる」
美沙樹がの手が、陽菜の頬に当てられる。親指の腹で滲んできた涙を拭う。
「素直になれば楽なのに…」
呟くような美沙樹の声は、誰に向けてのものだったのか。
「暗くなっちゃう。さ、やろう」
美沙樹の声に、
「かかってこい」
見守っていたふたりが応える。
ゲームが始まった。バレーといっても、ただ単にトスを回していくだけだ。
「美沙樹っ」
名を呼んで綾奈がトスを放つ。
「由香里」
美沙樹がトス。ボールを放つ者が、受ける者を指定するのだ。うまく返せなかった者が、敗者となる。
「陽菜」
4人は、ちょうど時計回りにボールを回した感じだ。
「美沙樹さん」
陽菜は、ふらつきそうになるのをこらえ、ボールを回す。
どうしても、頭の中を罰ゲームがよぎる。
「由香里」
美沙樹のボールが由香里へ。由香里の身体はすでに、次のトスを回す予定の綾奈を向いている。
「陽菜っ」
フェイントだ。陽菜には対応できない。
大股開きのまましゃがんで、なんとかボールを受けようとする。
その瞬間、視界にランニングする男性の姿が目に入った。こちらを見ている?
由香里たち3人も、しっかりと陽菜を…まさにぱっくり全開になった股間を見つめている。
「いやっ」
慌てて脚を閉じる。
ボールが地面を転がった。
「陽菜、マイナス1ポイント」
わぁっと3人が盛り上がる。
そこからが、美沙樹たち3人のチームワークの見せ所だった。
「綾奈さん」「陽菜っ」「美沙樹さん」「陽菜っ」…
誰にトスをしても陽菜に帰ってくる。
「そんな…」
ボールにさわる回数が増えれば、当然ミスする確率も増える。ましてや、陽菜は4人の中で、格段に鈍くさい。
陽菜の心を焦りが埋め、頭の中を罰ゲームの想像が満たしていく。
「はい、陽菜、マイナス2ポイント」
弾む美沙樹の声。
いやだ…このままじゃ…
公園からも見える位置にコンビニはある。だがそこに辿り着くには、マンションや住宅の前を抜けていかねばならない。
何人もの歩行者に、この恥ずかしい下半身をさらさなければならない。
きっとスカートなんてはかせてもらえないから、制服の上に短パンという、ちぐはぐな姿でいかされる。
下半身がペイントだと気づかない人たちも、そのちくはぐな出立ちに注目してくるはずだ。
公園に来るまでは自転車だったから、目撃されても、すぐに通り過ぎることができた。
だが今度は違う。歩くにしても走るにしても、きっとじろじろ見られてしまう。
陽菜は頭の中を埋め尽くす羞恥的な想像で、身体を熱くした。下半身が鋭敏になりながら、宙に浮いているような、奇妙な感覚に陥る。
「陽菜、マイナス6ぅ。ダントツ過ぎ」
綾奈が、げらげら笑う。
「そんな…だって…」
時折フェイントのように、他のメンバーにボールが回るが、ほとんどが陽菜に来るのだ。しかも、陽菜にとって、微妙なポイントを狙ってくる。
走り、大股開きになり、仰け反り、転びながら、陽菜はボールを追った。ひとり汗だくになって、荒い呼吸を繰り返している。



第2話□ペイント ※

[5/5㌻]

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「このまま陽菜で決まっちゃうのかなぁ」
美沙樹の楽しげな声。
「もちろん、スカートなんてなしだから」
由香里がつけくわえる。
こんな姿でコンビニに入ったら、きっといろんな人に見られる。遠目なら短パンに見えるペイントも、近くで見たら不自然さに気づかれる。
いくら本物の短パンを食い込ませたって、こんなにはっきりお尻の割れ目ができたりするわけがない。
正面から見たら、陰毛だってはっきりわかる。仮にお客さんがいなかったとしても、レジにいけば至近距離だ。
「陽菜、あと1回で罰ゲーム」
もうだめだ…
視界が霞む。落ちたボールを拾い上げるが、なかなか次の動作に進めない。膝ががくがくしている。
緊張のせいか、おしっこを堪えているかのような痺れが、股間を責めてくる。
ひんやりとした風が脚の間を抜け、そのせいで、自分の性器が普段以上の熱さを持っていると気づかされる。
「何してんの、陽菜。早くしな」
「はいっ」
慌てた。けれど力が入らない。
自分で軽く投げあげたボールなのに、それをトスし損ねる。
ボールが小さく跳ねながら、美沙樹の足下に転がっていった。

「陽菜の買い出し、決定!」
綾奈が高らかに宣言する。美沙樹と由香里が、おめでとう、と拍手する。
「そんな…許して…」
脚が震える。放心してしまいそう。立っているのがやっとだ。
「だめっ。私、ガリガリ君ね」
綾奈が言うと、由香里と美沙樹が続けて注文する。
逃げ場のない絶望感と、知らない人たちに変態的な姿を見せる緊張感。鼓動が高まり、吐息が切なくなる。まるで興奮しているように。
「…ってのは嘘。さずがにその格好じゃ、ねぇ」
美沙樹の言葉を最初、理解できなかった。
え?許してくれるの?
「そうだよね。そんな格好じゃ、警察に捕まるわ」
由香里が、少し照れくさいような視線を向ける。
「よくそんな格好でいままでいれたよね。ってか、もしかして、気づいてないんじゃない?」
綾奈が陽菜の下半身を指さす。
みんな、自分たちがこんな格好にさせたのに、どうしてそんな呆れたような、照れくさそうな顔をしてるのだろう。
確かに、ペイントしているとはいえ、結局は下半身裸だし、陽菜自身だってそれを自覚しているから恥ずかしいのだ。
多少、陰毛の辺りははげてきているかもしれないが…
「えっ?」
ようやく思考が追いついた。
陽菜の下半身を覆う塗料は、こすったらはがれてしまうものだ。しかも、濡れても溶け崩れる。
何回も転んだ。地面に尻餅もついた。汗もかいた。それに認めたくないけれど、性器は濡れている。
陽菜は、自分の下半身を改めて確認した。
脚の内側は、完全に塗料がなくなっていた。愛液と汗で溶け崩れ、こすれ落ちてしまったのだ。
陰毛の部分も、毛穴に塗料のかすが残っているぐらい。そのせいで、逆に普段より、体毛が濃く見える。
両サイドも、色は残っているが、まったくもって布にはみえない。
身体をひねる。お尻の両頬も、完全に肌が露出していた。肌が露出してからも尻餅をついたりしていたせいで、肌が赤くなっている。
地面に触れなかった割れ目の部分だけが、Tバックのようにくっきり残っていた。
こんな姿になってたの?これじゃ、完全に下半身裸と一緒。いったいいつから?どのぐらいの人に見られたの?
公園内もだいぶ薄暗くなってきたが、今いる場所は、早めに点いた外灯のお陰もあって、それなりに明るい。
今更周囲を見渡しても遅いし、誰がいるのかを確認するのも怖い。目撃者の中に、知り合いでもいたら、明日から顔を合わせられない。
「いやぁ…」
とうとう立っている力を失い、陽菜はその場にへたり込んだ。
頭が真っ白になり、身体中を痺れが駆け巡る。
「ほら、立って。あっちのトイレいって、下半身洗うぞ」
美沙樹の手が、陽菜の太腿に触れる。その瞬間、性器から背筋を通って頭まで駆け巡った電撃。
「んあっ ああぁっ」
頭の中が真っ白に弾け飛んだ。身体が、びくびく、と痙攣する。
「え?」
美沙樹が慌てて屈みみこみ、陽菜の身体を抱きとめる。
「んぁっ んっ ぁぁ…」
美沙樹の身体の温かさに寄りかかるように、陽菜もしがみつく。
美沙樹の腕が背中を強く抱く。それだけなのに、それを感じるだけで、股間から頭の先までを快感が貫く。
「まさか、いっちゃったの?」
美沙樹の声は、どこか優しい。
自分でも認めるしかない。こんな衝撃は、オナニーですら感じたことがない。
陽菜は、涙を流しながら、小さく頷いた。
「そっか、仕方ない変態だな」
美沙樹が、陽菜の頭を優しく撫でた。

【 完 】



第3話□目撃者 佳代 ※

[1/3㌻]

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佳代は、中庭にいた。夏休みの学校。
夏休み明けにある文化祭で出展する水彩画を仕上げようとしていた。
今年の美術部は、佳代ともうひとり、男子は入っただけだ。その檜山くんは、校庭から校舎を描いている。
佳代は、中庭に生えた樹を描くことにしていた。
補習を受けていたときは制服だったが、今は、Tシャツと膝丈にカットしたジャージ姿だ。
「んー」
今日は、いまいち気分が乗らない。何度も座る姿勢を変えたり、背伸びをしたりしてしまう。
ふと見上げると、樹の向こう、校舎2階の西側渡り廊下を歩く人影が見えた。
展望スペースで立ち止まる。女子ふたり。
誰だろう。1年生ではないのはわかる。ふたりとも制服だが、ベストは着ていない。上はブラウスだけだ。しかもひとりは黄色いブラウスだ。
1年生であんな格好をしていたら、先輩たちに虐められる。
挑発的な同級生が、ピンクのブラウスでベストも着ずに登校した日、2時間目から、Tシャツ姿になっていた。
背中やお腹に「インラン」とか「非処女」「黒ちくび」などと落書きされているのが、白い生地から透けて見えた。
しかも透けて見えていたのはそれだけではなく、本当に黒い乳首も透けて見えていた。
後から噂で聞いたのだが、3年生に呼び出され、ブラウスを没収されたらしい。
しかもブラまで剥ぎ取られ、背中やお腹、お尻に落書きされ、乳首をマジックで黒く塗りつぶされたという。
「非処女」なんて言葉も書かれていたのだから、たぶんそれ以外のこともされたのだ。
翌日から彼女は、まじめにベストを着てくるようになった。
「美沙樹先輩と…陽菜先輩だ」
どちらも中学からの先輩だった。中学のときはそんなに仲がよくなかった気がするが、高校に入ると、ふたり一緒にいるところをよく見かける。
ふたりは、展望スペースの窓側にきた。前面ガラス張りだから、もう少し真下に行けば、パンツが見えるだろうな、とか考えてしまう。
陽菜は背中を向けていたが、美沙樹はこちらを見下ろしている。手を振ってみようかとも思った。
1年生からは、怖い、ともっぱらの評判の美沙樹先輩だが、同じ中学の後輩である佳代には優しい。
「あっ」
先に、美沙樹先輩のほうが小さく手を振ってきた。
佳代も大きく手を振る。途端に、美沙樹先輩の手が口元にいった。
何だろう? あ、「しー」って言ってるんだ。静かにしろ?なんでだろう?
ああ、あんまり周りから見られたくないんだ。代わりに周りを見渡してみる。中庭にも校内にも、ふたりを見ているような人はいなかった。
夏休みの午後ともなれば、ほとんど生徒なんていない。
「え?」
美沙樹先輩の手が、陽菜先輩のお尻にかかった。そのままスカートをめくりあげる。
陽菜先輩が身もだえした。けれど、手でスカートを押さえたりしない。どうして?
そして佳代は気づいた。陽菜は手を背中で縛られている。
手首ではなく、腰より少し上で、折り曲げた肘から先を重ねるような格好で縛ってあるので、スカートをめくられても押さえられないのだ。
しかも、お尻の肉が見えてる。Tバックをはかされてるみたいだ。
美沙樹先輩は陽菜さんの耳元で何か喋る。なんて言っているのだろう?
佳代はもう、絵のことなんか忘れていた。時折、あたりを見回しては、ふたりの様子を見守り続けた。
「え?」
美沙樹先輩がお尻から手を離しても、スカートは戻らなかった。裾をウエストのところに挟んでしまったらしい。
陽菜先輩がいやいやをする。当然だ。あんな場所にいたら、誰かに見られてしまう。現に今、佳代が見ている。
陽菜先輩は、佳代の存在を知っているのだろうか?
陽菜先輩がこちらを向いた。いや、向かされた。そして佳代は気づいた。
「目隠し?」
陽菜先輩は制服のネクタイで、目隠しされているのだ。
美沙樹先輩の手が、陽菜先輩の胸元にかかる。ボタンをはずしていくのがわかった。
陽菜先輩が、一生懸命首を横に振るのがわかる。
虐められてるんだ…それなら、逃げるとか、助けを求めるとかすればいいのに。
それともできない、したくない理由があるんだろうか。


第3話□目撃者 佳代 ※

[2/3㌻]

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ブラウスの裾が、スカートから引っ張り出された。そして完全にボタンが外されてしまう。
ブラまで見せちゃうの?
違う。佳代はすぐわかった。
陽菜先輩は、白いブラウスの下に、ブラをつけていなかった。きっとあそこに辿り着くまでにも、ブラウスから透けた乳首を見せていたんだ。
同級生のあの子みたいに。
がばっ、とブラウスが容赦なく開かれた。太陽の光の下に陽菜先輩の両胸がさらされる。
「すごい」
見ている佳代の方がどきどきしてくる。吐息も荒くなってくる。
美沙樹先輩はそのまま陽菜先輩のブラウスを肩まではだけさせてしまった。完全に開ききったブラウス。陽菜先輩がみもだえしても、全く閉じようとしない。
美沙樹先輩がむき出しになった陽菜先輩の胸で遊んでいる。どんなことをしているのかまでは見えない。
乳首を弾いたり、つまんだり、こねたり、引っ張ったり…
佳代は勝手に想像してみる。
陽菜先輩が、必死に耐えているのがわかる。それは、嫌がっているというより、美沙樹の行為を受け入れ、快感に耐えているように見えた。
美沙樹先輩が後ろに回る。後ろから陽菜先輩に何か囁きながら、胸を刺激し続ける。
まるで佳代に見せつけるように、乳房を持ち上げたり、こね回したり。
目隠しされている陽菜先輩は、佳代が見ていることを知っているのだろうか?
見られていることもわからないまま…誰に見られているかもわからないまま、裸をさらしているのはどんな気持ちなんだろう。
大勢の人間の見ているかもしれない場所で、感じる場所を責められ続けるのは、どれほど気持ちいいんだろう。
佳代は、もだえる陽菜先輩の姿に自分を重ねる。
中庭に大勢のギャラリー。廊下にも向かい合う渡り廊下にも、窓辺に人が立ち、生徒全員が見ている。そんな想像までしてしまう。
あの渡り廊下の展望スペースは、陽菜先輩をさらし者にするためのステージに思えた。
佳代は無意識の内に、指でジャージの上から股間を刺激する。画板で隠していれば、誰にも気づかれないはず。
陽菜先輩の胸から、美沙樹先輩の右手が離れた。
後ろがめくれたスカートの中に手を入れ、右腰の辺りでもぞもぞしている。そして反対側も…
いやいやを繰り返す陽菜先輩。
次の瞬間、肩幅に開いた陽菜先輩の脚の間から、白いものが足下に落ちた。
もしかして、あれって下着?
きっと陽菜先輩がはいていたのは、両サイドが紐になっているショーツだったのだ。
ってことは、今、陽菜先輩はノーパン…
佳代は自分の胸の奥が切なくなるのを感じた。
佳代の見ている前で、陽菜先輩はゆっくり屈んでいく。
一緒にしゃがむ美沙樹先輩の手が、閉じようとする陽菜先輩の膝を開かせる。
陽菜先輩、あそこの毛、剃ってる…
中庭に向けて大きく開かれた脚の間にある性器には、陰毛がいっさいないように見えた。
両胸をさらし、ノーパンでM字に開脚。
陽菜先輩が隠しておきたい秘密の部分。その全部が、中庭に向けてさらけ出されていた。
佳代はいつの間にか、両手を使ってオナニーしていた。
片手でジャージをひっぱりあげ、布が食い込んで、まるで性器がみっちりつめこまれた袋のようになった股間を3本の指でひっかく。
小学生の時に覚えたやり方は、今でも本気でいきたいときの定番になってしまった。
学校の中庭であることを忘れたかのように…いや、学校の中庭であることが、よりいっそう、佳代の心まで刺激している。
展望スペースでも、陽菜先輩が股間を刺激されていた。
しかも佳代から見やすいように、美沙樹先輩は陽菜先輩のお尻の方から腕を回して、性器をいじっている。
少し無理な体勢でしゃがんでいるので、脚を閉じる余裕がないのか、美沙樹先輩のショーツまで丸見えだ。佳代は少し得をしたような気分になった。
美沙樹先輩がどんな指使いで、陽菜先輩を責めているのかここからではよく見えないけれど、陽光を浴びた陽菜さんの性器は、きらきら輝いて見えた。
ピンク色の内側まで太陽の光を浴びるのって、どんな気持ちなんだろう…
佳代は頭の中が飛びそうになる。けれどまだ美沙樹先輩たちは終わっていない。
ここで先にいってしまうのは、後ろめたい気持ちだった。
私も、もっと激しいことをしなくちゃ…
何をどうしたら、激しくなるのか。よくわからないまま、ぼうっとした視界で辺りを探す。
自分の指ほどのサイズの絵筆を見つけた。先のほうまで太く、先端が丸まっている。


第3話□目撃者 佳代 ※

[3/3㌻]

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指の変わりに絵筆で性器をなぞった。ごりごりと固い感触が、割れ目をえぐり、敏感な芯を押し潰す。
指とは違う硬質な刺激は、いつもの気持ちよさとは違うが、どこか別の何かに犯されているような感覚を佳代に与えた、
「ん…ぁぁ…ぁぁ…」
浅い呼吸を繰り返し、ふたりの先輩を見つめる。
胸をもんでいた美沙樹先輩の左手が、今は陽菜先輩をヘッドロックするような感じで巻きついている。
首を絞めたりしてる?違う。陽菜先輩の口を押さえてるんだ。そうしないと喘ぎ声が校舎中に響いちゃうくらい、激しく責めてるんだ。
佳代も、自分自身を激しく責める。
絵筆を持つ手に力が入り、ぐりぐりと割れ目にめり込む。
最初は縦になぞっていたはずのそれは、今では膣の入り口をジャージの上から出入りするように動いていた。
自分の中へめりこむ絵筆。それに引っ張られるように下着の布が動き、クリトリスを含めた性器全体を刺激する。
「これ…ぃぃ…んぁ…」
前かがみになりながら、顔だけはふたりをみつめ続ける。
陽菜先輩がのけぞる。次の瞬間、びくんとその身体が跳ねた。びくんびくん、と縦に揺れる。
まるで、ちんちんの姿勢で喜ぶ犬のような姿で、絶頂を迎える陽菜先輩。
陽菜先輩、あんなはしたない格好で、いっちゃってる。見られてるのも知らないで…
いや、そうじゃない。きっと佳代だけではない、いろんな人間に見られているところを想像させられながら、いかされたんだ。
ぐったりとその場に座り込む陽菜先輩の身体を抱きとめる美沙樹先輩と目が合った。
佳代自身が今、何をしているのか、どんな気持ちでいるのか、見透かされているような気がした。
そう感じた瞬間、全裸でオナニーしている自分の姿が頭に浮かび、そのまま白く弾けとんだ。
握力の緩んだ佳代の手から、ジャージの生地の伸縮性に負けた絵筆が飛び出て、芝生の上に転がった。

数分後、佳代は校舎に戻っていた。
我に返りあわてて周囲を見回し、誰も見ていなかったことに安心した。
赤いジャージの股間の部分は、そこだけ色が濃くなっている。まるでお漏らしでもしたかのような濡れ具合だ。
画板を背負いお尻を隠し、画材のセットで前を隠しながら校舎を歩く。みつかったら、オナニーしていたのがばれてしまう。
美術室においてある制服に着替えようとむかっている廊下で、美沙樹先輩と出会った。ひとりだった。
どんな顔をしたらいいのかわからなかった。
「よっ」
美沙樹先輩から声をかけてきた。
それだけで、治まったはずの感覚が内側から溢れ出てくる。
「こ…こんにちは。陽菜先輩は?」
動揺し、思わず、そんな言葉が口から出た。これでは、さっきの光景を見ていました、と言ったようなものだ。
「さすがにあれだけ虐めたからね」
美沙樹先輩も、佳代が当然見ていたものとして話し始める。
「ぐったりしちゃってさ。少し休ませてる」
その微笑む目が、佳代は休まなくていいの?と問いただすようだ。
「そ…そうなんですか…」
頭を下げ、その場から立ち去ろうとした佳代の、画材を持つ手を美沙樹が掴んだ。隠していたそこをさらされる。
「陽菜と一緒にいっちゃったんだね」
やっぱりばれていた。私も…陽菜先輩と同じようにしてもらえるんだろうか?
「ちゃんと着替えて帰らないと、まん汁の臭いで、野良犬が寄ってきちゃうよ?」
わざと、佳代の羞恥心をあおるような単語。
私も虐めてください、という言葉が胸に浮かんだとき、美沙樹の左腕が目に入った。
歯型。血がにじんでる場所もあるぐらい、くっきりと。
きっと陽菜先輩のだ。喘ぎ声を抑えるため自分の腕を噛ませていたのだ。
「ああ、これ?」
佳代の視線に美沙樹が気づいた。
「気持ちよくなると口唇噛んじゃうのが陽菜の癖なんだよね。自分の喘ぎ声が恥ずかしいらしくて。
口唇切っちゃうほど加減なく噛むからさ、代わりに噛ませてたんだ」
ハンカチでも何でも、他に噛ませるものはあったはずなのに…
「まあ、明日には消えるって」
大切なものでもしまうように、そっとまくっていた袖を直す。
「気をつけて帰りなよ」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。
佳代は胸の奥が、きゅっと締め付けられるような切なさを感じた。失恋に似ていた。
「私も、誰か探そう」
自分の歯形を愛しいと感じてくれる誰かを。
佳代は、美術室に向かって歩き始めた。

画材で股間を隠すのも忘れて。

【 完 】



第4話□くちづけ ※

[1/8㌻]

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夏休み明けの1週間弱。文化祭準備の追い込みだ。クラスや部活によっては、ここで一気に片を付けるたりもする。
授業時間でも、クラス担任の担当授業なら、準備時間にあてられることもしばしばだ。
朝から美沙樹が、学級委員長と熱心に打ち合わせをしていた。
準備をさぼってばかりの美沙樹にしては、珍しいな、と思っていたら、4時間目に理由がわかった。
「あまり寄り道するなよ」
担任がそう言いながら、美沙樹と教室に入ってきた。
「昼休みの間に戻ってきますって」
教師と話す美沙樹としては異例なほど、上機嫌だ。
「よし、陽菜。買い出しにいくぞ」
文化祭準備に必要な物品の買い出し。そのために美沙樹は委員長や担任と交渉していたのだ。
さぼるためなら、どこまでも努力家だ。

「まずは…」
委員長と書き出した買い物リストを眺め…
「だいたい○○で買えるな」
学校からさほどは慣れていないショッピングセンターに行くことになった。
担任から大人数で行くのは許されなかったのか、美沙樹とふたりきり。
由香里たちなら無許可でついてきそうだが、それもなかった。
外出の相方に自分が選ばれたのは、良くて荷物持ちのためだろう。
下手をすれば、ファーストフード店辺りで美沙樹だけがくつろいで、陽菜ひとりで買い出し、というのもあり得る。
「昼もここで食べちゃいたいし、さっさと買っちゃうよ」
とりあえず、ひとりで歩き回らずに済んだようだ。
足りなくなった絵の具やマジック、画用紙やのり、布やビーズ。ひとつひとつは小さいが、細々といろいろあった。
それらを美沙樹は手際よく買い揃えていく。事前にシュミレーションしていたのではないかと思うほど、効率的だ。目的の物を買い終わるまでに30分ほどしかかからなかった。
「よし。なかなかの好タイム。さあ、マック行こう」
結局サボるのが目的か。そう思ったのは、陽菜の勘違いだった。
ショッピングセンターの2階にマックはある。適当にハンバーガーやシェイクを買うと、美沙樹に先導され一番端の席に来た。
そこは横が透明なアクリル板になっていて、その向こうが1階からの吹き抜けだった。
入り口前の広場で、ベンチに座る親子連れや老夫婦が見える。平日の日中なので、かなりまばらだ。
丸いテーブル。ふたりとも吹き抜けに背を向けるように、席に着く。
陽菜が座ろうとしたときに、
「背もたれにスカート引っ掛けて、お尻だしな」
耳元で美沙樹が囁く。
「え?」
陽菜が硬直する。
「逆らうなら、あとで洒落になんないけど?」
数日前に、どうしても実行できない命令があって、そのときにされたお仕置きの記憶がよみがえる。

用具室で全裸にされ、身体のいたるところを洗濯挟みで挟まれたのだ。
乳首も乳房の肉も、おへその縁も、伸びかけの陰毛にも。
クリは皮ごと挟まれ、性器のひだには左右ふたつずつ。
太ももやお尻は、無理やり薄皮をつままれ、脇にまでつけられた。
口唇、舌、まぶた。鼻の穴の左右と真ん中の三ヶ所を挟まれたときには、あまりの惨めさに泣いた。

「逆らい…ません…」
毎日のように何かしらの責めにあい、命令されると最近では条件反射のように、身体が熱くなる。
「あ、ちょっと待って」
美沙樹の手が、陽菜のお尻を鷲づかみにする。
「ぁっ」
突然のことに声を出したが、賑やかな店内のおかげで、誰も気づかなかった。
「このほうが、楽しいかも」
美沙樹の手が巧みに動く。お尻の割れ目にショーツの生地が食い込んでいく。
「よし。座りな」
命じられたとおりにスカートを背もたれにひっかけ、そのまま座る。
お尻に冷たく硬い気の感触。
「ちょっとめくれすぎ?」
横に座る美沙樹が笑う。横からもピンクの下着が覗いていた。
「下からも見えてるかな、パンツ。ってか、陽菜のケツ」
椅子の背もたれは、背に当たる場所にしか板がなく、腰から下は後ろから見えてしまう。
ポテトを数本まとめて口の中放り込むと美沙樹は立ち上がり、
「ちょっと下から見てくるから、そのままでいな」
店を出て行った。



第4話□くちづけ ※

[2/8㌻]

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スカートをめくり、お尻を露出したまま陽菜は、ひとり取り残された。
あまりの緊張で、脚を硬く閉じる。何もできず、トレーに乗せられた広告を見つめる。
美沙樹さんが下に到着するまで、どのぐらいの時間だろう…
その間だけでも、スカートを戻しておくこともできたはずだ。けれど、陽菜の心の中に、美沙樹との約束は守らなければ、という気持ちが存在していた。
毎日義務付けられている、美沙樹の名を呼びながらのオナニーもそうだ。
最初の頃は、証拠として動画を撮ることになっていたが、最近では、始めるときといったときに報告のメールを入れるだけだ。
それだって、適当に時間を見計らってメールだけ入れればいい。そうしないのは、うまく表現できないが、美沙樹への想いだった。
美沙樹は陽菜を虐めるためなら、労力を惜しまない。他の者が陽菜を虐めようとすると、相手が男子だろうと、殴りかかってでもそれをとめる。
その美沙樹の気持ちに自分も応えたい、と思うようになっていた。命令を、約束を守ること。それが美沙樹との絆のように感じられるのだ。
メールがきた。携帯を開く。
『マルミエ』とだけ本文があり、下から取った写メが添付されていた。
画像は小さく、よくわからなかったが、そのせいで陽菜がスカートをはいていないように見えた。
下からは、こんな風に見えている…
そう知ってしまうと、余計にお尻に神経が集中してしまう。
椅子の冷たさは消え、下半身が熱い。
アクリルの柵の下は、数センチの隙間があり、そこから吹き上げてくる風が、むき出しの肌を撫で回す。
陽菜は顔まで熱くなるのがわかった。
正面を向く。若いカップルは大学生だろうか。小さい子を連れたお母さんもいる。サラリーマンがこちらをチラ見しているように思える。
自分の意思で下着を食い込ませ、お尻を出してるって気づかれたら、どうしよう…
美沙樹さん、早く戻ってきて…
「よっ」
と美沙樹の姿が見えたときは、安堵から笑みを浮かべてしまった。
「何、お前、きも。ケツ出して笑うなよ」
美沙樹が隣に座りなおす。
「気づかれないように、下見てみな」
陽菜は、ゆっくり首を美沙樹の方に向け、視線だけを吹き抜けの下に送る。
広場ベンチにサラリーマンがいた。頭をかく振りをしたりして時折顔を上げる。
あからさまに見上げているおじさんもいた。
店内に入ってきた男ふたりが、歩きながら徐々に顔の角度を上げていく。ひとりが指を刺した。
「みんな、陽菜のケツ見てる。下からだと、パンツもあんまりよくわかんないからさ、下半身裸にみえるさ」
写メのせいだと思っていたが、肉眼でもそんな風に見えているのだ。
陽菜は、もう頭の中が恥ずかしさで埋め尽くされていた。
「そのビックマック、食べ終わったら、スカート戻していいよ」
ひと口も食べていない。
こくり、とうなずくと、陽菜はハンバーガーにかぶりついた。
早く食べないと。注文したときには感じていた空腹など、すっかり消えている。
下半身の熱さが身体を満たしていた。
早く食べないと、こうしている間にも、いろんな人が、自分のお尻をみてるかもしれない。
美沙樹が持ってきてくれた水で、のどのつまりを解消しながら、何とか食べきった。
「スカート、戻していいですか?」
「いいよ。けど、戻したら、パンツ脱いでね」
さらりと美沙樹が言った。
「ここで…ですよね…」
断るつもりはなくなっていた。美沙樹さんが隣にいてくれたら、大丈夫。そんな気持ちになっていた。
「もちろん」
こちらをチラ見していたサラリーマンはもういない。他にこちらを気に留めている人はいないようだ。
座ったまま、スカートの横に手を入れる。
こんな短いスカートで…正面に人がいたら、見えちゃうかも…
「もたもたしてると、怪しまれるんじゃない?」
スカートに手を入れたまま硬直する陽菜に、美沙樹が囁く。
「うん…」
少し腰を浮かせた。目だけ動かして、周囲をうかがう。
大丈夫。下着を下ろした。一気に膝まで。
身体を折り曲げて、ひざを通す。そこで止まった。
男性がひとり入ってきた。ふらふらと席を探す。こちらを見た。
下着を掴んだまま、陽菜は硬直した。男性の視線が、ひざまで降りた下着に、その奥の股間に注がれているような気がする。
しかし、男性は表情ひとつ変えず、少し離れた席に、背中を向けて座った。
どうやらテーブルの陰になる角度だったらしい。
「ほら」
促される。
テーブルとひざとの間はあまりない。膝を上げて、片足ずつ抜くわけにもいかない。靴を脱ぎ、ショーツが引き抜きやすいようにすると、一気に足首までずり落とした。
踵を上げ、下着を通すと、そのまま爪先を抜いた。



第4話□くちづけ ※

[3/8㌻]

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「ちょうだい」
美沙樹が手のひらを出す。テーブルの上に。
拾い上げたピンク色の薄布を拳の中に握りこんだまま、陽菜はテーブルの上に手を出した。
握り拳の横から、ショーツの端が見えている。
「ほら。ハンカチ、早く貸して」
美沙樹の言葉がフォローになっているかわからなかったが、拳のまま美沙樹の手のひらに自分の手を乗せた。
手がかすかに震えている。
美沙樹が空いた手を陽菜の拳の上に重ねる。
促されるまま手を開く。陽菜と美沙樹の手のひらの間で、暖かい布が膨らんでいく。
「よくできました」
陽菜は、美沙樹の手の間から、ゆっくり手を引き抜いた。
「どれどれ、ハンカチはどのぐらい汚れてるかな」
美沙樹が上に乗せていた手のひらをどける。
明るい店内にさらされるピンクの塊。ゴムの力で小さく丸まっているが、ハンカチには見えない。
「やっ」
手を伸ばして奪い返そうとする陽菜を制し、
「暴れると、スカートめくれるんじゃない?」
「ぁ…」
慌てて、スカートを押さえ、脚を閉じる。
「うあ…」
両手のひらでうまく隠しながらもテーブルの上で、美沙樹は下着を裏返した。
「ぅ…」
それをみて陽菜は、性器の奥が締め付けられるような感覚になった。
蛍光灯とそれを上回る天窓からの陽光に照らされ、陽菜の下着の性器を包んでいた部分は、ぬめぬめと光る痕を残していた。
「変態」
ひと言囁くように。美沙樹の声は楽しそうだ。
「今、スカートの中、どんな感じになってるの」
スカートのポケットに下着をつめると、残りのポテトを食べながら聞いてくる。
「スカートが短いので、お尻の下の方が、椅子に直接当たって冷たいです」
か細い声で答える。
「それから?」
続きを求める美沙樹の声。
毎晩のオナニーの際、たまに美沙樹から実況しろと電話がかかってくることがある。自分の指の動き、感じ具合、性器の濡れ、緩み方。事細かに説明させられる。
そのときと同じ口調だった。
「それと、あそこの…」
「ん?」
電話での実況は、漠然とした表現を許して貰えていない。
「ま…」
こんな人のいる場所で、その言葉を口にするのは初めてだった。声が震える。
「ま…んこの…お尻に近い側も、椅子に当たって、冷たくて…」
冷たいです、と言ってしまうだけで良かったのに。
「…気持ち…いいです」
「こんなことして気持ちよくなっちゃうんだ。じゃ、ま○こ濡れてる?」
「たぶん…」
「ちゃんと確認した?」
陽菜は身体が固まる。深く息を吸い込んで、呼吸を止める。そろそろとスカートに手を入れ、中指の先で割れ目をなぞった。
「ん…」
なぞるだけのつもりだったのに、簡単に第一関節まで潜り込んでしまった。
「濡れて…ます」
手を引き抜く。
その手を美沙樹は掴み、テーブルの上に乗せる。下着以上に、生々しく光る指先。
「どうして?」
「陽菜は…」
電話でしか、自分の部屋でしか伝えたことのない言葉…
「陽菜は、裸を見られて感じる…変態なので…」
呼吸が荒くなる。頭が白くなる。
「たくさんの人にお尻をみられて、恥ずかしくて…」
スカートの裾をぎゅっと掴む。
「美沙樹さんに命令されると…それだけで、身体が熱くなって…」
美沙樹の表情が少し、驚いたようになった。今まで言ったことのない台詞。
「美沙樹さんの隣で…感じてるって思ったら…」
身体が熱いのに、鳥肌の立つような感覚。腰の中がずきずきする。
「私が、陽菜の感じてるのに気づいてたら、どうなるの?」
美沙樹の瞳。心の奥まで見つめられている気持ちになる。
声が震える。頭の中が美沙樹でいっぱいになる。
「余計…恥ずかしくて…ん…気持ちよくて…」
陽菜の身体が小さく震える。自分の身体を抱く。抑えないと弾けそう。
「ゃ…だめ…助けて…」
身体を襲う波が大きくなる。とめられない。
「いきそうなの?」
美沙樹が静かに聞く。
陽菜は頷くだけで精一杯だ。
「こんな人前で、下半身さらけだして、恥ずかしいのに感じてるの?」
耳から身体の内側を刺激する愛撫のような声。
「私に命令されるだけで、ま○こぐちゃぐちゃに濡らしてるの?」
身体が震える。頷くことさえできない。
「いきなさい」
美沙樹が陽菜を強く抱きしめた。きつく、優しく。
「はぃ…」
美沙樹が押さえ込んでくれる中で、陽菜は痙攣を繰り返す。



第4話□くちづけ ※

[4/8㌻]

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意識が戻ってきたとき、シャツの上から美沙樹の肩を噛んでいることに気づいた。
「大丈夫?」
痛みなど顔に出さず、美沙樹が頭を撫でる。
「テストの点数悪かったぐらいで、いちいち泣いてってしょうがないだろ」
テスト?
焦点の合ってきた目で周囲を見渡すと、こちらを見ている人たちが何人かいる。
「うん…ごめんなさい…」
私、こんな人前で、いってしまったんだ。そんな私のこと、美沙樹さんは、ずっと抱きしめてくれていた。
私は意識が跳んだからわからないけど、美沙樹さんは、周囲の人たちが注目していることを知っていたはずだ。
それでも、ためらわずに…
「ごめんなさい…」
陽菜はもう一度言うと、本当に涙をこぼした。
「ほら、そろそろいかないと、先生に怒られるし」
ポケットから出したハンカチで、陽菜の涙を拭いてくれた。
そのピンク色に見覚えがあって、陽菜は固まる。
「このハンカチが、何か?」
美沙樹が楽しげに微笑んだ。

マックを出ても美沙樹は、下着を返してはくれず、そのままふたりはショッピングセンター内を歩き始めた。
陽菜は、美沙樹の腕を掴んでいた。
まだ、頭と身体がふわふわとしている。「いった」と表現するのが正しいのか、よくわからない。初めての感覚だった。
全身が暖かな充足感に包まれ、それは脳内まで満たしている。
「すっげー間の抜けた顔してるんだけど?」
美沙樹が顔をのぞき込んでくる。これだけ陽菜を辱めておいて、まだやりたりない、という顔。
「もう…戻ろうよ…」
身体がおかしい。立っていられない。
というより、横になって、この余韻に浸っていたい。
「それでいいの?」
え?いいに…決まっている。
それなのに、迷ってしまった自分がいる。
腰の中に溜まった熱さが、治まることなく疼いている。
「このまま教室に戻って、みんなの前で普通の顔していられる?」
美沙樹の問いに、陽菜は首を横に振っていた。自分でもどうすることもできない感覚。
「じゃあ、いかせてほしい?」
頷く。美沙樹なら、自分ではもうどうすることもできなくなったこの身体を救ってくれるように思えた。
「じゃあ、私のいうことに服従だからね」
「はい…」
服従…その言葉だけで、身体が溶けていきそうだった。

ショッピングセンターの2階の通路は、中央が吹き抜けになっていて階下を見下ろせる。
当然1階から見上げたら…
陽菜は、吹き抜け側を歩かされた。
下を向かないよう視線をそらす陽菜に、
「ちゃんと下を見な。誰にみてもらえたか、ちゃんと確認しなよ」
1階を歩く人たちは、それがマナーであるかのように、見上げることはなかった。
見上げたからといって、陽菜のスカートの中が、はっきり見えるわけでもない。それでも、真下から突き上げてくる視線を感じ、陽菜は吐息を荒くしていた。
「美沙樹さん…」
助けてもらえるどころか、身体の疼きはひどくなる一方だ。
マックの店内では、このまま頭の中が白くなったが、それもない。
一度達した身体は、それ以上の本質的な快楽を求めていた。
「少し、座るか」
前方に見えるベンチを指さす。
「由香里からのメールも返したいし」
ふたりはベンチに座る。
「まん汁ついたら困るから、スカート下にしないように座りな」
硬い感触がお尻にめり込む。
数枚の板が透き間を空けて並べられた作りで、板の一枚一枚が微妙に湾曲している。
そのた

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先生・生徒・禁断 | 【2022-10-19(Wed) 12:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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