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小さな気遣い

俺は今兄貴と母親と3人でマンション暮らしをしている。

さて今年はとても暑い。去年も猛暑で暑かったが、東日本大震災があった今年も猛暑が続いている。

そんな夏の今日、俺が自宅に戻ると隣の号室に住んでいる中学生の女の子が彼女の自宅の前で荷物もおいて座り込んでいる。彼女は体育着姿で座っていた(おそらく部活帰りだろう)。鍵がなくては入れない。親も帰ってきていないようだ。
 
この様子を見て俺は冬も似たようなことがたあったなぁと思い出す。
 冬の寒い日、この時は女の子ではなく、彼女のお兄さん(当時中学生で今は高校生)が鍵もなく、彼の自宅には誰もいなくて、ドアの前でたたずんでいた。このとき俺はボーっと通り過ぎて自分の自宅に戻った。後でよくよく考えて見ると、寒い日、自宅には入れなくて長い時間外にいて寒そうだった。ココアとか暖かいものでも差し入れすればよかったかなぁと思った。
 もしかしたら隣の号室の子供はまた家に入れない状況があるかもしれない。そのときは飲み物を差し入れしよう。お隣さんだしね。そう俺は思った。

 俺が自分の自宅に入ると母親がちょうど夕食を作っていたところだった。俺は母親に言った「隣の人鍵がなくては入れないみたいだよ。水とか冷たいものでも飲ませてあげて!!」
母親「いつもこの時間親が帰ってきているのに…お兄ちゃん?」

俺「いや、妹の方。お兄ちゃんは冬に家に入れなかったことがあるけど。」

母親は冷たいカルピスを作りながら「自分で渡したら?」と言う。

俺「いや、絶対やめたほうがいい。」

母親「なんで?」

俺「なんとなく。(外にいるのがお兄さんの方だったら俺が自分でで渡すところだが、妹となるといろいろと考えてしまう。年頃の中学生の女の子が大人の俺に話しかけられたら怖がるし、警戒するだろう。現に今の世の中物騒で年頃の女の子は男に声賭けでもしようものなら不審に思われがちだ。第一俺は女の子にきやすく話しかけられる性分ではない)」

 俺の母親は冷たい飲み物を持って隣の中学生の女の子に飲ませてあげた。俺はちょっとした用事があるから母親が女の子に飲み物を渡すより先に自宅を出てマンションの階段を降りる。すると母親の声が聞こえた。

 母親「これ、お兄ちゃん(俺のこと)の好意。」

 

俺は思った『君のお兄ちゃんが冬に自宅に入れなかったことがあるんだ。俺じゃなくて君のお兄さんのおかげだよ。あの時は君のお兄さんに暖かい飲み物を差し入れしようと言う機転が利かなかったからね。そのちょっとした後悔からだよ。』




以上 萌えのない話でした。


 

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純愛・恋愛 | 【2022-07-09(Sat) 12:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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